2012年12月3日月曜日

かじかびょうぶ












「かじかびょうぶ」(川崎大治/文 太田大八/絵 童心社 2004)

昔、ある山里に、とても栄えた家がありました。ところが、その家のあるじの菊三郎は、生まれつきの怠け者で、毎日遊んで暮らしていました。そのため、あれぼどあった山や畑も売りつくし、とうとうかじか沢のある奥山も、手放すことになってしまいました。

売るまえに、菊三郎は奥山をみにでかけます。かじか沢の大きな一枚岩に寝ころんでいると、水草でつくったような、ぼろぼろの着物を着て、カエルのような顔をした奇妙なじいさまがあらわれます。「わっしゃあ、このあたり一帯に住む、かじかの棟梁でごぜえやす」と、じいさまはいいます。「のう、菊三郎さま。この、かじか沢だけは、どうか売らんどいてくださりませ──」

川崎大治さんが、伊豆の老人から聞いたという話をもとにした絵本です。文章は、民話調のタテ書き。太田大八さんは「天人女房」など、さまざまな作品をえがいています。さて、このあと、菊三郎は、家の古道具をかきあつめて売り払い、なんとかかじか沢を売らずにすませます。おかげで、家に残ったのは、なにも描いていない屏風が一枚きりになってしまいます。ところが、その晩、眠っている菊三郎の耳に、何十、何百というかじかの鳴く声が聞こえ、起きてみると、屏風にみごとなかじかの絵が描かれていて──と、お話は続きます。かじか(カエル)と人間の交流をえがいた、味わい深い一冊です。小学校中学年向き。

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