「うっかりもののまほうつかい」(エヴゲーニイ・シュワルツ/作 オリガ・ヤクトーヴィチ/絵 松谷さやか/訳 福音館書店 2010)
昔、あるところに、イワン・イワーノヴィッチ・シードロフという学者がいました。魔法使いでもあり、機械づくりの名人でもある、イワン・イワーノヴィッチは、自分でつくった数かずの発明品のなかでも、ロボ君が大のお気に入りでした。ロボ君は、大きさはネコくらいで、イヌのようにあとからついてきて、人間のようにおしゃべりができました。
ロボ君は、ごはんのしたくもするし、玄関のドアもあけます。夜になると、自分でからだをバラバラにして眠り、朝になると元通りになって、イワン・イワノーヴィッチを起こします。さて、あるときロボ君と森に散歩にでかけたイワン・イワノーヴィッチは、荷馬車に麦を積んで粉引き小屋にむかう男の子に出会います。イワン・イワノーヴィッチが魔法使いだと知った男の子が、「ぼくの馬をネコにできますか」というと、イワン・イワノーヴィッチは「できるとも!」と、馬に動物を小さくする魔法のレンズをむけて──。
作者のエウゲーニイ・シュワルツはロシアのひと。絵を描いたオリガ・ヤクトーヴィッチは「かもむすめ」をえがいたひとです。さて、このあと、魔法のレンズの威力で、馬はネコになってしまいます。それをみて、ロボ君は驚きます。動物を大きくするレンズはこわれてしまったので、ガラス工場(こうば)に直しにだしてあったのです。「馬はネコになったけど、力は馬のままだから、荷車を引っ張れる」と、イワン・イワーノヴィッチは泣きだした男の子をなだめ、ひと月たったら動物を大きくするレンズをネコに向けると約束するのですが──。巻末の著者紹介によると、本書は2008年に亡くなったオリガ・ヤクトーヴィッチの最後の作品だということです。「かもむすめ」のかっちりした作風とはちがって、鉛筆と水彩でえがかれた柔らかみのある絵柄が、よくお話にあっています。小学校中学年向き。
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