「ヴァレンカのちいさな家」(ベルナデッテ・ワッツ/作 いけだかよこ/訳 ほるぷ出版 1992)
昔、ロシアの森にヴァレンカという名前のおばさんが住んでいました。ヴァレンカはいつでも、聖母マリアさまと、赤ちゃんのキリストさまがえがかれたイコンに、森の花を飾りっていました。ある日、幸せに暮らしているヴァレンカのもとへ、大勢のひとたちがやってきました。「西のほうが戦争だ。兵隊がどんどんこっちにやってくる。荷物をまとめていますぐ逃げよう。さもないと、ひどい目にあうぞ」。すると、ヴァレンカはいいました。「わたしも逃げてしまったら、だれが疲れた旅人の世話をする。森で迷子になった子どもたちを、だれが助けてやる。冬になって、雪がつもり、氷が張ったら、だれがけものや鳥たちにえさをやる」──。
次の日、小屋に火をつけられたヤギ飼いのピョートルが、ヤギと一緒にヴァレンカの家にやってきます。その次の日、村も畑もめちゃくちゃにされた絵描きのスチェバンを、ヴァレンカは家に誘います。その夜、ヴァレンカの家に、逃げる途中両親とはぐれてしまった、ハトを抱いた小さな女の子が訪れます。ヴァレンカは毎晩、「兵隊にこの家がみえないほど高い壁をつくってください」と神さまにお祈りをします──。
作者のベルナルデ・ワッツは、「ヘンゼルとグレーテル」(岩波書店 1985)や「まつぼっくりのぼうけん」などで高名な、バーナデット・ワッツのこと。本書はワッツの処女作です。このあと物語は、神さまがみんなのお祈りにこたえてくれ、すべてが満足のいくラストを迎えるのですが、そこに至るまでの迫真さには大変なものがあります。絵は、おそらくクレパスをつかってえがかれたもの。作中にも登場した、イコンのような絵柄です。小学校中学年向き。
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