2011年12月14日水曜日

しかのハインリッヒ

「しかのハインリッヒ」(フレッド・ロドリアン/作 ヴェルナー・クレムケ/絵 上田真而子/訳 福音館書店 1988)

シカのハインリッヒは、何週間も汽車に乗り、長い船旅をして、中国の深い森から大きな動物園へ連れてこられました。動物園で暮らすようになって一番うれしかったのは、子どもたちがやってきてくれたときでした。子どもたちは、飼育係のエーリッヒさんからお許しがでたときだけ、ニンジンを投げてくれました。ところが、クリスマスイブの日、子どもたちはプレゼントで頭がいっぱいで、だれもハインリッヒのところにきてくれません。夜になり、ハインリッヒはえいと柵を飛びこえると、動物園の仲間にさよならをいいました。そして、ふるさとの中国の森へむかって駆けていきました。

ふるさとの森に帰ろうと思ったハインリッヒでしたが、だんだんお腹がぺこぺこになってきます。そこで、ある村に近づくと、子どもたちがやってきます。歌いながらやってきたその子たちは、動物園にハインリッヒに会いにきた、あの子どもたちで、カブラやキャベツを結びつけた、森の動物たちへのクリスマスツリーを地面に突き立てると、歌いながら去っていきます──。

クリスマス絵本の一冊です。このあと、クリスマスツリーのごちそうを食べたハインリッヒは、お腹いっぱいになったものの、なんとなくものたりなくなり、動物園にもどります。動物園には、子どもたちが大勢待っていて、ハインリッヒはまた柵のなかにもどります。絵は、太い描線でえがかれたユーモラスなもの。語り口もユーモラスで、最後にすべてがうまくいく楽しい読物絵本です。小学校中学年向き。

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