2011年12月7日水曜日

急行「北極号」










「急行「北極号」」(C.V.オールズバーグ/作 村上春樹/訳 あすなろ書房 2003)

ずいぶん昔、まだ子どものころ、クリスマス・イブの夜に、ぼくはサンタのそりの音が聞こえないかとベッドで耳をすませていました。すると、夜も更けてから、しゅうっという蒸気の音と、金属がきいいっときしむ音が聞こえてきました。スリッパをはき、ローブをはおって外にでると、車掌が、「みなさん、ご乗車くださーい」と大きな声で叫びました。「どこへいくんですか」とたずねると、「どこって、もちろん北極点さ。これは急行『北極号』だもの」と、車掌はこたえました。

ぼくが列車に乗りこむと、なかはパジャマやナイトガウンを着た子どもたちでいっぱい。列車は、暗い森を抜け、高い山をこえて、北極点の町へむかいます──。

クリスマス絵本の一冊です。夜、列車に乗って北極点の町にいくというアイデアがなにより秀抜です。絵は、おそらくパステルをつかってえがかれたもの。オールズバーグは、ありえない世界を、劇的な構図と大変な画力でみせてくれます。物語はこのあと、北極点に着き、「クリスマスのプレゼントになにがほしいのかな」とサンタにたずねられた〈ぼく〉がサンタの鈴をお願いして…と続きます。クリスマスの夜の幻想をえがいた、オールズバーグの代表作です。1980年度コールデコット賞受賞作。小学校中学年向き。

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