2012年7月19日木曜日

灰かぶり











「灰かぶり」(グリム/原作 スベン・オットー/絵 矢川澄子/訳 評論社 1986)

昔、ある金持ちの奥さんが病気になり、娘をひとり残して亡くなりました。金持ちは、2人の娘をもつ新しい妻をめとりました。この2人の娘たちは、きれいで色白でしたが、心根はいやしくて真っ黒でした。まま母とまま姉さんたちは、娘に灰色のぼろを着せて、木靴をあてがい、朝から晩まではたらかせました。娘にはベッドもなかったので、夜はかまどの灰のなかで寝ていました。おかげで、いつもむさくるしく、灰まみれだったので、娘はいつしか「灰かぶり」と呼ばれるようになりました。

あるとき、父さんが大きな市にでかけることになり、姉さんたちは、きれいな着物や、真珠と宝石をおみやげにほしいといいます。ですが、灰かぶりは、「帰り道で、一番先に父さんの帽子にさわった小枝を1本折ってきて」といいます。灰かぶりにいわれたとおり、父さんがはしばみの枝をもって帰ると、灰かぶりは母さんのお墓にいき、その小枝を植えて泣きだします。小枝は立派な木になり、真っ白な小鳥が1羽やってきて、灰かぶりの望みをなんでも聞きとどけてくれるようになります──。

グリム童話をもとにした絵本です。「灰かぶり」とは、「シンデレラ」のことですが、マーシャ・ブラウンの「シンデレラ」とは、細部がいろいろちがっています。まず、灰かぶりを助けてくれるのは白い小鳥で、仙女ではありません。灰かぶりの靴はガラスではなく純金ですし、物語の後半、靴をはこうと姉さんたちはナイフでつま先を切り落とします。また、ラストでは、姉さんたちは報いを受け、目が見えなくなってしまいます。絵は、空間がよく表現された上品な水彩。物語に真実味をあたえています。小学校中学年向き。

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