2012年7月13日金曜日

おおかみのこがはしってきて











「おおかみのこがはしってきて」(寮美千子/文 小林敏也/絵 パロル舎 1999)

《ちいさな おおかみのこが はしってきて
 こおりの うえで つるんと ころんだ。

   ねえ どうして ころんだの?

 それはね こおりが えらいからだよ。
 おおかみよりも ずうっとね。

 でも こおりは とけちゃうよ。
 ねえ どうして?

 それはね おひさまが えらいからだよ。
 こおりよりも ずうっとね。》

アイヌの民話をもとにした絵本です。解説が記された付録の紙によれば、本書のお話は、さまざまなバージョンをもとに、ひとつの新しい話に仕立て直したものだということです。絵は、少ない色数を巧みにつかった、版画調のもの。文様をうまくとりいれ、絵が単調になるのをふせいでいます。お話は、ほとんど父と子の問答です。お日様よりも雲がえらく、雲よりも風がえらく、風よりも山がえらく…と、お話は進みます。話のつくりは、「ねずみの嫁入り」によく似ていますが、「ねずみの嫁入り」が「強い」というニュアンスであるのに対し、本書は「えらい」と語られているところがちがっていると、解説は指摘しています。本文には、ところどころ、アイヌ語によるルビが振られています。小学校中学年向き。

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