2012年8月23日木曜日

天の火をぬすんだウサギ










「天の火をぬすんだウサギ」(ジョアンナ・トゥロートン/作 山口文生/訳 評論社 1987)

昔、地上には火がありませんでした。山の上には火があり、天のひとたちが守っていましたが、天のひとたちは火をくれませんでした。木の葉が落ちて、冷たい風が吹いてくると、「だれが火をとってくる?」と動物たちはいいあいました。強いのは野牛だし、もの知りはオオカミ、クマは勇敢で、ヤマネコはけんか好きです。でも、一番賢いのはウサギでした。ウサギは、燃えやすいマツヤニを羽根に塗りつけて、きれいな羽根飾りをつくると、それをかぶり、天のひとが住む山へでかけました。

さて、天のひとたちはウサギをみて、「あいつはウソつきだ。だまされちゃいけないぞ」といいます。でも、ウサギは「新しい踊りを教えてあげにきましたよ。この踊りをおどれば、トウモロコシは畑にいっぱい、網のなかには魚がどっさりとれますよ」といって、うまく村に入りこみます。そして、踊りを教えるふりをして焚き火に近づいていき、羽根飾りに火をつけ、すかさず山をかけ降ります──。

カバー袖の文章によれば、本書のストーリーは、北米インディアンにつたわる「火の起源伝説」の代表的な2つの話をもとにつくったということです。絵は、味わいのある水彩。このあと、天のひとたちは、ウサギを追いかけて、大雨やみぞれや雪を降らせ、カミナリを落とします。ですが、マツヤニを塗った羽根飾りは明るく燃え続け、消えることがありません。疲れたウサギは羽根飾りをリスに渡し、炎のためリスの尻尾は丸まってしまいます。この先は、動物たちによる羽根飾りのリレーとなり、動物たちがなぜいまのような姿になったのかという由来譚となります。このストーリーは「まじょのひ」を思い起こさせます。似た話が世界のあちこちにあるというのは、本当に面白いことです。小学校中学年向き。

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