2012年4月27日金曜日

みずうみにきえた村









「みずうみにきえた村」(ジェーン・ヨーレン/文 バーバラ・クーニー/絵 掛川恭子/訳 ほるぷ出版 1996)

六つのころ、わたしは、この世にこわいものなんか、なんにもないと思っていました。ママはひとりで学校まで歩いていかせてくれ、十字路にでるまでは、ジョージ・ウォレンにも、ナンシー・ヴォーンにも会いませんでした。夏の昼下がり、わたしとジョージは糸に手づくりのハリをつけて、スウィフト川でマスを釣りました。みんなで墓地にいってクギ投げをしたり、ウィルおじいちゃんのお墓の上でピクニックしたりしました。おじいちゃんの黒いお墓は、あつい夏の日をいっぱい浴びて、一日中ぽかぽかしていました。

夏の夜はよく庭にでて、ナンシー・ヴォーンとカエデの木の下で眠ります。ある夜、ナンシー・ヴォーンが町に住んでいるいとこのサラを連れて、ガラスびんを3つもってやってきます。わたしたちはホタルをつかまえると、びんに入れ、手でふたをしたのですが、様子をみにきたママが首を振っていいます。「はなしてやらなきゃだめよ、サリー・ジェーン」。そこで、わたしはママにいわれたとおり、ホタルをはなしてやります――。

ジェーン・ヨーレンは「月夜のみみずく」で、バーバラ・クーニーは「にぐるまひいて」「ルピナスさん」で、それぞれ高名です。文章はディティールに富み、絵は語り口に応じた端正なもの。このあと、ボストンのひとたちの飲み水のため、貯水池をつくることになり、村は湖に沈むことになります。まず、はじまったのがお墓の引っ越し。インディアンのお墓はそのままにしておくことになり、〈わたし〉はこう思います。「わたしはインディアンたちが聖なる地に残れてよかったと思いました」。ラストでは、大人になったわたしが父と湖を訪れます。ディティールをゆるがせにしなかったことが、ここで大いに生きてきます。小学校高学年向き。

0 件のコメント:

コメントを投稿