「彼の手は語りつぐ」(パトリシア・ポラッコ/作 千葉茂樹/訳 あすなろ書房 2001)
南北戦争に参加した、15歳の白人の少年シェルダンは、傷を負い、2日ほど草原で横たわっていました。すると、同じくらいの年の、シェルダンと同じ北軍の制服を着た黒人の少年があらわれました。少年はシェルダンを介抱し、「ひところにじっとしてたら敵に見つかっちまう。歩き続けないとだめなんだ」と、シェルダンをかつぎ上げ、よろめきながら歩きだしました。
身をかくすために地面に伏せるうちに、顔も口のなかも土まみれになりながら、2人は進みます。気がつくと、シェルダンはベッドに横たわっています。そこは、モーモー・ベイという黒人少年のお母さんの家。助けてくれた少年はピンクス・エイリーと名乗ります。「おまえさんの傷が治ったら、すぐここを発とう。おれたちがここにいると、モーモー・ベイがあぶないんだ」と、ピンクス・エイリーはいうのですが──。
南北戦争を題材にした絵本です。絵は、鉛筆による線画に、おそらくマーカーで色づけしたもの。本文は〈ぼく〉というシェルダンの1人称。本文の前後には、この物語の成り立ちが記されています。「わたしは、この物語が実話だということを知っています。シェルダン・ラッセル・カーティス本人が、娘のローザに語った話だからです。ローザ・カーティス・ストウェルは、その娘、エステラに語りつぎました。そして、エステラ・ストウェル・バーバーは、息子ウィリアムに。ウィリアムは、その娘パトリシア、つまりわたしに語ってきかせました」。物語はこのあと、過酷なできごとが待っています。小学校高学年向き。
0 件のコメント:
コメントを投稿