「はなのすきなうし」(マンロー・リーフ/文 ロバート・ローソン/絵 光吉夏弥/訳 岩波書店 1954)
昔、スペインに、ふぇるじなんどという可愛い子ウシがいました。ほかの子ウシたちは、毎日とんだり、はねたり、駆けまわったりして暮らしていましたが、ふぇるじなんどはひとり草の上にすわって、静かに花の匂いをかいでいるのが好きでした。牧場のはしにあるコルクの木が大好きで、一日中木陰にすわって、花の匂いをかいでいました。
ふぇるじなんどのお母さんは、ひとりぼっちでさびしくはないかしらと、ときどき息子のことが心配になります。「どうして、おまえはほかの子どもたちと一緒にとんだりはねたりして遊ばないの」とたずねると、ふぇるじなんどは頭を振って、「ぼくはこうして、ひとり匂いをかいでいるほうが好きなんです」とこたえます──。
名作絵本の一冊です。絵は、鋭い描線でえがかれた線画。白と黒のコントラストが鮮やかです。このあと、大きく強いウシに成長したふぇるじなんどは、牛飼いに見こまれ、闘牛に出場するはめになってしまいます。「ふぇるじなんどは とても しあわせでした」という最後の一文が心に残る一冊です。小学校低学年向き。
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