「キツネ」(マーガレット・ワイルド/文 ロン・ブルックス/絵 寺岡襄/訳 BL出版 2001)
一匹のイヌが焼けたばかりの森から、やけどを負ったカササギをくわえて走ってきました。ねぐらのほら穴に着くと、やけどの手当をしようとカササギを降ろしました。でも、カササギは「どうせもう二度と飛ぶことなんかできないわ」といいました。「ぼくだって片方の目がみえないんだよ」と、イヌはいいました。
何日かたち、少し気力をとりもどしたカササギを背に乗せて、イヌは勢いよく走ります。カササギは思わず叫びます。「飛んで! もっと飛んで! わたしがあなたの目になるわ、あなたはわたしの羽になって!」
文章は手書き。横書きですが、横書きのままタテにレイアウトされたりします。手書き文字と日本語版文字レイアウトは川端誠。絵は、どう描いたのか見当がつかないものですが、ストーリーにぴったりあっています。このあと、カササギとイヌのあいだに、キツネが入りこんできます。最初、カササギはキツネを怖がりますが、「おれはイヌよりはやく走れるぜ。イヌなんか捨てて、おれと一緒にいかないか」とキツネに誘われ、心うごかされます。イヌの背に乗って走りながら、カササギは思います。「こんなのって飛ぶのとはちがうな。まったくちがうな!」。暗い感情のうごきをみごとにとらえた一冊です。大人向き。
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