2012年5月22日火曜日

空飛び猫










「空飛び猫」(アーシュラ・K・ル=グウィン/著 村上春樹/訳 S.D.シンドラー/絵 講談社 1993)

自分の4匹の子猫たちに、どうして翼が生えているのか、ジェーン・タビーお母さんにはさっぱりわけがわかりませんでした。「この子たちの背中に翼が生えているのは、この子たちの生まれる前に私がみた夢のせいかもしれないわ。あれは空を飛んでこの町から出ていく夢だったもの」と、タビーお母さんはいいました。タビーお母さんと子猫が暮らす界隈は、あまり環境がよくなく、しかも日毎に悪くなっていきました。朝から晩まで自動車やトラックがゆききし、そこらじゅうにゴミが散らばり、お腹をすかせたイヌがあたりをうろついていました。

ある日、タビーお母さんは、ちびのハリエットが宙に飛び上がって、イヌをやりすごす場面にでくわします。そのとき、すべて合点のいったタビーお母さんは、子どもたちをあつめて話をします。「お母さんは、おまえたちが生まれる前にひとつの夢をみました。ここは子どもたちが成長するのにふさわしい場所ではありません。おまえたちはここから飛んでいくために、その翼をさずかったのです」──。

翼をもったネコたちの冒険をえがいた読物絵本です。作者のル・グウィンは「ゲド戦記」(岩波書店)の作者として高名です。絵は、緻密な線画にわずかに着色した、非常に写実的なもの。絵を描いたシンドラーは「マグナス・マクシマス、なんでもはかります」といったユーモラスな絵本も描いています。さて、このあと、タビーお母さんは子どもたちにこういいます。「ゆうべ、トム・ジョーンズさんが私に結婚の申しこみをしました。私はその申しこみを受けるつもりです。そうなると、子どもたちは邪魔なのです」。そこで4匹の子どもたちは、生まれた町を飛び立ち、とある森にたどり着いて…と、空飛び猫たちの冒険はまだまだ続きます。巻末に、訳者による語句の解説がついています。また、「空飛び猫」はシリーズ化され、「帰ってきた空飛び猫」「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」「空を駆けるジェーン 空飛び猫物語」の3冊の続編が出版されています。大人向き。

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