2012年5月9日水曜日

エリカ 奇跡のいのち










「エリカ 奇跡のいのち」(ルース・バンダー・ジー/文 ロベルト・インノチェンティ/絵 柳田邦男/訳 講談社 2004)

1933年から戦争が終わった1945年までの12年間に、じつに600万人ものユダヤ人が殺されました。数え切れないほどの人びとが、銃殺されるか、飢え死にするか、コンクリートの部屋にとじこめられて焼き殺されるか、毒ガスで殺されるかしました。しかし、わたしはそういう目にあわないですみました。

お母さまやお父さまは、何百人ものユダヤ人たちと一緒に駅にあつめられたとき、どんな思いをいだいたのでしょう。牛をはこぶ貨車に押しこめられ、立ったままぎゅうぎゅうづめで、うごくこともできなかったでしょう。お母さまはわたしをしっかりと抱きしめ、わたしを守ってくださったと思います。お母さまとお父さまは、そのだいじな決心をいつしたのでしょう──。

ユダヤ人虐殺をあつかった絵本です。冒頭に、この本は著者が出会ったエリカという女性の生い立ちをもとにつくられたと記されています。絵は、非常に写実的なもの。ほとんどモノクロ調ですが、最後にいたってカラーになります。このあと、お母さまとお父さまのだいじな決心により一命をとりとめた〈わたし〉は、育ての親――ユダヤ人の子どもを預かるという危険をおかした――のもとで成長します。育ての親は、〈わたし〉が生まれて何ヶ月かを想像して誕生日を決め、エリカという名前にちがいないと、そう名づけてくれます。痛ましい運命のなかで、父母の決心が印象に残ります。小学校高学年向き。

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