「おばあちゃんのはこぶね」(M.B.ゴフスタイン/作 谷川俊太郎/訳 すえもりブックス 1996)
90年前、わたしが子どもだったとき、父が箱船をつくってくれました。父は箱船をつくるのが楽しそうでした。どうしてかというと、ドアのむこうから、「長さは300キュービット」という、神様みたいな声が聞こえてくることがあったからです。
父が彫ったノアは、片手にカナヅチ、片手にモップをもっています。奥さんはノコギリをもっていて、それから2頭のヒョウと、2頭のヒツジと、2頭の灰色のウマと、2羽の白いハトがいます──。
絵は、非常にシンプルな線画。〈わたし〉の1人称で語られる文章もとてもシンプルです。〈わたし〉が大きくなるにつれ、父は動物を増やしてくれます。そのうち、結婚し、子どもが生まれると、〈わたし〉は子どもたちにノアのお話と、おじいちゃんがドアのむこうで叫んでいたことを教えてあげます。「とことんまで描いて、ついにはなんだか自然に描けてしまったような気がするまで描くこと」と、カバー袖の文章に、ゴフスタインが絵本づくりの秘訣を述べていますが、それがよくわかる一冊です。大人向き。
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