「ここが家だ」(ベン・シャーン/絵 アーサー・ビナード/構成・文 集英社 2006)
1954年1月22日。第5福竜丸という船に23人の漁師が乗り、焼津の港から海にむかいました。最初は東へ、それから南へ、また東へ、4千キロもこえてミッドウェーという島にやってきました。ですが、ミッドウェーの海ではマグロがみつからなかったので、もっと南、マーシャル諸島をめざして進みました。
2月27日、第5福竜丸はついにマグロの群に出会います。寝るまもなく、どんどん釣り上げてはナワをはずしていましたが、3月1日の夜明け前、いきなり西の空が、太陽がのぼるように真っ赤に燃え上がります。5分、6分、7分、8分、ドドーンと爆発の音が響き、しばらくして空から白い灰が降ってきます──。
副題は「ベン・シャーンの第五福竜丸」。アメリカの水爆実験により、マーシャル諸島のビキニ環礁で被爆した、第5福竜丸をテーマにした絵本です。20世紀を代表する画家のひとり、ベン・シャーンがえがいた「ラッキードラゴン・シリーズ」という連作が、この絵本のもとになっています。このあと、被爆した第5福竜丸の乗組員たちは、一路焼津へもどります。「助けてくれ」と無線を打つことはできません。水爆実験をみた以上、もっとひどい目にあわされるかもしれないからです。ベン・シャーンの力強い線と、それに負けないことばが、この絵本を力のこもったものにしています。巻末に「石に刻む線」という文書があり、ベン・シャーンと「ラッキードラゴン・シリーズ」について、手際よく解説されています。小学校中学年向き。
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