2012年6月7日木曜日

漂流物









「漂流物」(デイヴィッド・ウィーズナー/作 BL出版 2007)

「レッドブック」「ちいさな天使と兵隊さん」同様、文章のない、サイレントによるマンガ形式の絵本です。海岸に打ち上げられたカメラを、遊びにきていた男の子がみつけます。カメラにはフィルムが入っていて、お店にいって現像してみると、海の世界の驚くべき光景が写し出されています。さらに、東洋人の女の子の写真があり、女の子が手にもっている写真をよくみると、その写真のなかで男の子が写真を手にしています。その写真には、また写真を手にした男の子がいます。虫メガネでは倍率が足りなくなり、顕微鏡でのぞいてみると――。

ウィーズナーは、非常に写実的な絵で、奇妙なできごとをえがく名手です。本書でも、ウィーズナーの画力はいかんなく発揮されています。不思議なカメラがとらえた写真には、機械仕掛けの魚が泳いでいたり、タコの一家がソファでくつろいでいたり、ハリセンボンの気球に乗って、魚たちが空を富んでいたりします。ラスト、カメラはまた海に帰るのですが、その後のカメラの旅には、北斎を模した絵があったりします。精妙な画力でえがかれた、遊び心あふれる一冊です。2007年度コールデコット賞受賞。小学校中学年向き。

なお、ウィーズナーはこのときが3度目の受賞です。1度目は「かようびのよる」(徳間書店 2000)、2度目は「3びきのぶたたち」(BL出版 2002)です。

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