「コウモリのルーファスくん」(トミ・ウンゲラー/作 いまえよしとも/訳 BL出版 2011)
夜、ごちそうを探しにでかけたルーファスは、野外映画会をみかけました。それまで夜しか知らなかったので、映画のきれいな色に驚きました。そして、昼間の素敵な色をみられたらすごいだろうなと思い、次の日の朝、眠らずに起きていました。日が昇りはじめると、その美しさに、ルーファスはみとれてしまいました。
色にあふれた世界を知ったルーファスは、自分のうっとうしい色にうんざりします。だれかが原っぱに忘れていった絵の具をつかって、耳を赤、爪を青、足を紫に塗り、黄色く塗ったお腹のところに、緑の星をえがきます──。
「すてきな三にんぐみ」(偕成社)で高名な、ウンゲラーによる絵本です。ウンゲラーは、ヘビやタコといった、あんまり人気がなさそうな動物をよく主人公にしますが、本書ではコウモリです。このあと、昼間の空に飛びだしたルーファスは人間に撃たれて、地上に落ちてしまいます。そこは、蝶のコレクターとして知られたタータロ先生の庭で、ルーファスが蝶ではないと気づいた先生は、絵の具を落とし、ルーファスの手当をしてくれます。昼間の世界にあこがれた、コウモリのルーファスのお話です。小学校低学年向き。
本書は、「こうもりのルーファス」(はぎたにことこ/訳 岩崎書店 1994)のタイトルでも出版されています。訳文をくらべてみましょう。
「こうもりのルーファス」
《ルーファスは こうもりです。
いつも、ひるまは ほらあなの
てんじょうに ぶらさがって、ねてばかり。
でも、よるになると、ごちそうを
さがしに そとへ でていきます。》
「コウモリのルーファスくん」
《ルーファスは コウモリ。
そとがあかるいうちは ずっと――ほらあなの 天井に
ぶらさがって、ねているばかり。
でも、夜ともなれば――そとにとびだし、
ごちそうさがし。》
「ルーファス」は、「ルーファスくん」にくらべて小振りの絵本で、表紙にえがかれたコウモリの向きが逆になっています。それから、印刷のちがいでしょうか、「ルーファス」のほうが、夜がずいぶん明るいです。
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