「たくさんのお月さま」(ジェームズ・サーバー/文 ルイス・スロボドキン/絵 なかがわちひろ/訳 徳間書店 1994)
昔、海辺の王国にレノア姫という小さなお姫さまが住んでいました。ある日のこと、レノア姫はキイチゴのタルトを食べすぎて病気になってしまいました。王様はレノア姫にいいました。「なにか、ほしいものはあるかい? 姫のためなら、なんだってもってきてあげよう」。すると、レノア姫はいいました。「お月さまがほしいな。お月さまをもらったら、きっと元気になると思うの」
王様は、月をとってこいと大臣や魔法使いや数学者に命じますが、みんないろいろと述べたあげく、そんなことはできませんというばかり。そこで、王様は道化師を呼ぶと、道化師は、「レノア姫さま自身がどう考えているのかうかがわなくてはなりませぬ」と、レノア姫の部屋を訪れます──。
大人が解けない問題を、軽やかに解決するお姫様のお話です。作者のジェームズ・サーバーは、映画「虹をつかむ男」の原作者として高名。このあと、道化師は金細工に頼み、レノア姫が望んだお月さまをペンダントにして渡します。でも、夜になってまたお月さまがあらわれたら、自分のお月さまが本物でないことに姫は気づいてしまうのではないかと、王様は心配するのですが──と、ストーリーは続きます。
訳者あとがきによれば、本書は1949年に日米出版社から光吉夏弥さんの訳で出版されたそうです。そのときは、判型なども小さかったそうですが、今回の再出版にあたり、原書と同じ判型にしたとのことです。スポロドキンの手により、お姫さまは大変愛らしく描かれています。1944年コールデコット賞受賞作。小学校中学年向き。
0 件のコメント:
コメントを投稿