2010年9月21日火曜日

うしとトッケビ












「うしとトッケビ」(イ サン 文 ハン ビョンホ 絵 アートン新社 2004)

ある山里にトルセという薪売りがいました。親も親戚もなく、普段はごろごろ遊んで暮らし、食べものがなくなると、山へいって薪を売って暮らしていました。そんなトルセには、財産を丸ごと売って手に入れた牛がいました。トルセはこの牛をとても大切にしていました。ある冬の日、トルセが牛を連れて市場によって帰る途中、天気が悪くなり、あたりが暗くなってきました。そこへ突然、森のなかから一匹のおかしな生きものが飛びだしてきました。それはトッケビの子どもでした。

トッケビの子どもは、イヌに尻尾を噛まれてしまい、術をつかって家に帰ることもできません。トッケビの子どもは訴えます。「ふた月のあいだ、この牛のお腹に入れてください。代わりに、牛の力をいまの10倍強くしてさしあげます」。断ればトッケビの子は凍えて死んでしまうでしょうし、牛が10倍も力もちになるなんて悪い話ではなさそうです。トルセがトッケビ申し出を承諾すると、トッケビの子は大喜びで、牛の口からお腹に飛びこみます──。

韓国の童話を絵本にしたものです。トッケビが牛のお腹に飛びこむと、牛の力はほんとうに10倍になり、トルセは力もちの牛を連れて歩くのが楽しくて、一所懸命薪を売りにでかけて、お金もたくさんたまります。ですが、ふた月たって、太ってしまったトッケビの子は牛のお腹からでられなくなってしまって…と物語は続きます。絵は、ディフォルメの効いたパステル画。訳者解説によれば、、この「牛とトッケビ」は、豊島与志雄の「天下一の馬」(「赤い鳥」1924年3月)を翻案したものだということです。ですが、「天下一の馬」自体も、西洋の物語が加わってできた話ではないかと、訳者の大竹聖美さんは怪しんでいます。小学校低学年向き。

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