「古代エジプトのものがたり」(ロバート・スウィンデルズ/再話 スティーブン・ランバート/絵 百々佑利子/訳 岩波書店 2011)
古代エジプトの神話を紹介した読物絵本です。「太陽神ラーの神話」「オシリスの神話」「ファラオ(王)と神と魔術師」という3つの神話が、17の話により紹介されています。目次を引用してみましょう。
・「まえがき」
《太陽神ラーの神話》
・「光と、ものみなすべての命」
すべてはどうやってはじまったのか
・「いうことをきかない子どもたち」
ヌートとゲブ
・「血の池」
太陽神ラーは、どうやって人間をこらしめたか
《オシリスの神話》
・「神がみのおくりもの」
イシスとオシリス
・「うつくしい箱」
オシリスの死
・「ざんこくな王」
イシス、逃げる
・「ひみつの名前」
イシスはどうやってラーのひみつをききだしたか
・「ちいさなツバメ」
イシス、オシリスをさがす
・「愛の勝利」
オシリス、よみがえる
・「セトの毒ヘビ」
幼子ホルス、すくわれる
・「魔法の目」
ホルスは、どうして目をなくしたか
・「ホルスの復讐」
ホルスは、どうやってオシリスの復讐をなしとげたか
《ファラオ(王)と神と魔術師》
・「王子とゆうれい」
トトの魔法の本
・「怒れる神」
ナイル川の氾濫は、なぜとまったのか
・「なんでももっていた王さま」
おちた髪どめ
・「不実な妻たち」
誠実な弟
・「天にむかう船」
きょうふの旅路
・「物語に登場する男神(おがみ)と女神たち」
このなかから、簡単にオシリスの神話の出だしを紹介しましょう。
ヌートとゲブの子どもたち(イシス、オシリス、セト、ネフティス)が大きくなると、イシスとオシリスにはエジプトのよく肥えた土地があたえられ、セトとネフティスには、砂漠ばかりの残った土地があたえられました。オシリスは役に立つ金属を土のなかから掘りだし、ひとびとにその使いかたを教えました。また、イシスは種をまいたり、ヒツジやヤギやウシを飼うことを教えました。こうして、イシスと、「善き人」と呼ばれるオシリスがおさめたエジプトには、偉大な文明が花開きました。
しかし、オシリスの弟、セトはオシリスをねたんでいました。「兄さんは、いちばんよい土地をもらったんだ。ああいう土地をもらえれば、おれだって美しくしたさ。──オシリスばかり愛され、おれのことはだれも気にかけやしない」。そこで、セトは残酷な計略を思いつきました。長い旅からもどってきたオシリスが、メンフィスの都で休んでいることを知ったセトは、オシリスを呼んで宴会をもよおすことにしました。宴会のさなか、家来たちが華やかに飾られた大きな箱をもってきて、背丈がぴったりおさまれば、この箱がもらえるというゲームがはじまりました。オシリスが入って寝そべると、その箱はオシリスにぴったりでした。でも、これがセトの計略だったのです。セトの家来たちは、オシリスが入った箱のふたを閉じ、縄で縛り上げると、ナイル川に放りこみました。オシリスは息ができなくて死んでしまい、セトはエジプト王の座にすわりました──。
このあと、セトに命を狙われることになったオシリスの身重の妻、イシスの、たったひとりたたかいがはじまります。
絵は、おそらくパステルでえがかれた、シンプルで深みのあるもの。カバー袖にえがかれた訳者による文章によれば、エジプトの物語は、長いあいだだれも知ることができなかったのですが、200年ほど前からヒエログリフ(象形文字)の読みかたがわかってきて、この偉大な物語も知ることができるようになったということです。文章も絵も格調があり、エジプト神話の入門書として優れた一冊となっています。小学校高学年向き。
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