2010年8月30日月曜日

北の魔女ロウヒ












「北の魔女ロウヒ」(バーバラ・クーニー/絵 トニ・デ・ゲレツ/原文 さくまゆみこ/編訳 あすなろ書房 2003)

遠い北の国にロウヒという魔女が住んでいました。ある朝、目をさましたロウヒは雪が降っているのを見ると、スキーをはいてでかけることにしました。でも、ロウヒは魔女。いつのまにか、スキーは地面をはなれ、ロウヒは空を飛んでいました。

やがてロウヒは、ワイナモイネンが石に腰をかけて、カンテレ(フィンランドの伝統的な楽器。木の胴に張った弦を指ではじいて音をだす)を弾いているのに出会いました。美しい楽の音に、森のけものや、鳥や魚、太陽や月までもがあつまってきました。すると、それまで隠れていたロウヒは、いたずら心を起こし、ワシに姿を変えると、太陽と月をつかんで飛び去ってしまいました。

こうして、ロウヒが太陽と月をあかがね山に閉じこめてしまったので、世界は暗闇に沈んでしまいます。ワイナモイネンは、鍛冶屋に太陽と月をつくってほしいとお願いし、鍛冶屋は金から月を、銀から太陽をつくるのですが、金の月も銀の太陽もちっとも輝きません。いきりたった鍛冶屋は、鉄の首輪と鎖をこしらえて、月と太陽を盗んだ泥棒を捕まえようとしますが──。

フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」をもとにした絵本です。訳者あとがきによれば、ロウヒがいたずらな魔女に描かれている点や(原典ではもっとよこしまな魔女)、月と太陽をつくってほしいと鍛冶屋に頼むのがワイナモイネンである点など(原典では若い娘たち)、ところどころに変更がほどこされているようです。クーニーはこの絵本でも、様式的でかつ実感がともなった、叙事詩にふさわしい見事な仕事をしています。小学校中学年向き。

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