「しらゆきべにばら」(グリム/原作 バーバラ・クーニー/絵 鈴木晶/訳 ほるぷ出版 1995)
昔、夫をなくした貧しい女のひとが、ふたりの娘と暮らしていました。庭にはバラの木が2本あり、1本は白バラ、もう1本は紅バラでした。娘たちはそのバラに似ていたので、ひとりはしらゆき、もうひとりはべにばらと呼ばれていました。ふたりは、とてもよい子で、よくはたらき、いつも陽気でした。
ある晩、3人がいつものように家のなかで座っていると、だれかがせわしなくドアを叩きました。べにばらが、可哀想なひとが立っているのだろうと思いドアを開けると、そこにはクマが立っていました。3人がおびえると、クマがいいました。「こわがらないでください。なにもしませんから。寒くて凍えてしまいそうなので、火のそばで暖まりたいだけなんです」
その日から、クマは毎日やってきて子どもたちの遊び相手になります。しらゆきもべにばらもよくクマになつくのですが、春がくるとクマはこなくなってしまいます。それから、しばらくしてふたりは森で、木にひげをはさまれた小人に出会います。しらゆきがハサミでひげを切って、助けてあげるのですが、恩知らずにも小人は文句ばかりいって去っていき──。
グリム童話をもとにした絵本です。このあと、クマの話と小人の話は思いがけなくつながります。巻末の解説によれば、このお話は「グリム童話」の第3版ではじめて収録されたそうです。口伝えの昔話を採集したのではなく、カロリーネ・シュタールというひとが書いた「恩知らずの小人」というお話を、グリム兄弟、とりわけウィルヘルム・グリムが結末を創作して、一遍の物語として仕立て直したと考えられているそうです。クーニーの絵は、わずかに色彩をつかった上品なモノクロ調のもの。しらゆきとべにばらが大変かわいらしく描かれています。
0 件のコメント:
コメントを投稿