「ウェン王子とトラ」(チェンジャンホン/作・絵 平岡敦/訳 徳間書店 2007)
昔、深い森の奥に、トラのお母さんが住んでいました。子どもたちを猟師に殺されてしまったトラは、人間が憎くてたまらず、村を襲い、家をこわし、ひとや家畜を食い殺しました。知らせを聞いた王様は、兵をあつめ、トラ狩りをすることにしました。狩りがうまくいくかどうか、占い師のラオラオ婆さんにたずねると、婆さんはこたえました。「トラの怒りを鎮める手だてはただひとつ。ウェン王子さまをトラにさしだすしかありません」
王様とお后さまは悲しみますが、ウェン王子をトラのところにやろうと決意します。ウェン王子がひとり森に入り、木の下で眠っていると、そこへトラがやってきます。ウェン王子を食わえたトラは、昔、自分の子どもを食わえたことも思いだし、すると怒りがすっと消えていきます──。
人間に子どもを殺された母トラと、ウェン王子との交流をえがいた読物絵本です。絵は、水墨画の技法をつかったもの。絵も物語も格調が高く、母トラの悲しみが強く胸に迫ってきます。2005年ドイツ児童図書賞受賞。小学校高学年向き。
0 件のコメント:
コメントを投稿