「ちからたろう」(いまえよしとも/文 たしませいぞう/絵 ポプラ社 1977)
昔、それは貧しいじいさまとばあさまがいました。風呂などめったに入れなかったので、からだ中こんび(垢)だらけでした。ある日、じいさまがいいました。「わしらはもう年をとってしまったで、わらしはできん。せめておらたちのこんびでも落として、それで人形でもこさえるべや」。そこで、風呂に入って、こんびをとり、それをあつめて小さな人形をつくりました。本当の子どもにするようにお椀にまんまをもってやると、人形はいきなり手を伸ばし、まんまをぱくんと食べてしまいました。
それから、こんびたろうと名づけられた人形は、まんまをわしわし食い、どんどん大きくなりました。でも、たろうは嬰児籠(えじこ)のなかに寝たまま口もききません。何年もたったあと、たろうは突然、「おらに百貫目の金棒をつくってけろ」といいだしました。まだ足腰も立たないのにどうするんだとじいさんがいうと、「それだから、そいつを突っ張って立ってみるんじゃ」と、理屈までいいます。じいさまが財布の底をはたいて金棒を注文し、10人の若者がそれを届けると、たろうは金棒を杖にして立ち上がり、そのとたん見上げるような大男になりました。金棒を軽がると振り回すたろうを見て、じいさまは「おまえはこれから、ちからたろうだ」といいました。
その後、ちからたろうは自分の力がどのくらいひとの役に立つのかためすため旅にでて、途中出会った、みどうっこたろうや、いしこたろうを倒して子分にし、町の女をとっていくという化け物を退治します。
巻末の、「太郎について」という作者の文章によれば、本書は「聴耳草紙」や「日本昔話集成」をもとにして、再話したということです。ただ、「聴耳草紙」の25番、「3人の大力男」とくらべると、ラストが大きくちがっています。「3人の大力男」のラストが時代の産物であるなら、「ちからたろう」のラストもまた時代の産物といえるでしょう。また、本書には「つぶたろう」が併録されています。
田島征三さんの絵は、物語によくあった力強いもの。本書の絵によって、第2回世界絵本原画展の金のりんご賞を受賞しています。小学校低学年向き。
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