「大森林の少年」(キャスリン・ラスキー/作 ケビン・ホークス/絵 灰島かり/訳 あすなろ書房 1999)
1918年の冬、ミネソタ州ダルースの町では、悪性のインフルエンザが流行り、たくさんのひとが死んでいきました。そこで、父さんと母さんは、10歳になる息子のマーベンを、父さんの友人がはたらいている北部の、木材の伐採現場にいかせることにしました。マーベンは、仕立て直した父さんの古いオーバーを着こみ、母さんがつくってくれたラートケ(ユダヤ料理、ジャガイモのホットケーキ)と、クニッシュ(ユダヤ料理、小麦粉の皮に肉や野菜をつめて揚げたもの)、それに6歳の誕生日に父さんがつくってくれたスキーをもって、ひとり列車に載り伐採現場にむかいました。
5時間ほどのち、ミネソタ州ベミジに到着したマーベンの前には、果てしない雪原がひろがっていました。スキーをはいて、帯のようにみえる森林をめざしてひたすら進むと、森の入口で父さんの友人のムレーさんが待っていてくれました。伐採場に到着したマーベンは、ムレーさんから、朝、男たちを起こす仕事と、きこりたちの給料の台帳をつける仕事を任されます。マーベンは仕事をうまくこなし、伐採場のきこりたちとも仲良くなりますが、春になり、町に帰る日がやってきます──。
ひと冬の少年の経験をえがいた、傑作読物絵本です。本の扉をひらくと、はるばるとした雪原にスキーの跡が続く絵がひろがり、そこから物語に引きこまれます。雪原の広さや、森林の深さ、冬の光などが、素晴らしい実感をもってえがかれています。また、訳者あとがきで灰島かりさんが書いているように、大男のジャン・ルイがマーベンを肩車して歩いていく場面は、一度読んだら忘れられない、名場面になっています。小学校高学年向き。
0 件のコメント:
コメントを投稿