2013年5月10日金曜日

満月をまって















「満月をまって」(メアリー・リン・レイ/文 バーバラ・クーニー/絵 掛川恭子/訳 あすなろ書房 2000)

父さんは、次の満月がくるまでのあいだに、かごをつくり、ハドソンまで売りにいきます。うちには馬車も荷馬車もないので、歩いていかなくてはいけません。帰りが遅くなっても、お月さまが道を照らしてくれます。

〈ぼく〉は父さんが一緒にハドソンに連れていってくれる日を心待ちにしています。でも、父さんは、「もっと大きくなったらな」と、ひとりでいってしまいます。でも、〈ぼく〉が9歳になったと、「一緒にきてもいいだろう」と、父さんはいってくれます──。

100年以上前、ニューヨーク州のハドソンからそう遠くない、コロンビア郡の山間に、かごをつくって暮らすひとたちがいました。本書は、そのひとたちをえがいた絵本です。このあと、父さんと一緒にハドソンにでかけた〈ぼく〉は、みるものすべてに驚きます。ところが、帰り道、母さんにハドソンのことをなんて話そうかと考えながら歩いていると、広場にいた男のひとに、「おんぼろかご、くそったれかご」と、心ないことばを浴びせられます。〈ぼく〉は深く傷つくのですが──。

著者あとがきによれば、100年前にはもう、そのひとたちがいつごろからそこに住み着き、かごをつくっていたのか、本人たちにさえわからなくなっていたそう。そして、1950年代になると、かごに代わって、紙袋や段ボール箱やビニール袋がつかわれるようになり、最後までかごをつくり続けていた女性も、1996年に亡くなったということです。小学校高学年向き。

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