2011年10月22日土曜日

ごびらっふの独白












「ごびらっふの独白」(草野心平/詩 いちかわなつこ/絵 斎藤孝/編 ほるぷ出版 2007)

〈るてえる びる もれとりり がいく。
 ぐう であとびん むはありんく るてえる。
 けえる さみんだ げらげれんで。
 くろおむ てやらあ ろん るるむ
 かみ う りりら む。
 ……〉

「声にだすことばえほん」シリーズの1冊です。草野心平の詩、「ごびらっふの独白」が、いちかわなつこさんの水彩により、絵本に仕立てられています。カエルが主人公の絵本らしく、絵には水気が多く、葉っぱに乗って川を下ったり、電車に乗ったりと、細部が楽しくえがかれています。巻末には、この詩の日本誤訳が載せられていて、冒頭の2行はこうなります。

〈幸福というものはたわいなくっていいものだ。
 おれはいま土のなかの靄(もや)のような幸福につつまれている〉

原文は旧かな。読むと、まさかカエルがこんなことをいっていたとはと驚きます。声にだして読むと大変面白い1冊です。小学校低学年向き。

2011年10月21日金曜日

ピッツァぼうや












「ピッツァぼうや」(ウィリアム・スタイグ/作 木坂涼/訳 セーラー出版 2000)

ピートはご機嫌ななめでした。友だちと外で遊ぼうと思ったら、雨が降ってきてしまったのです。そんなピートをみて、お父さんはピッツァをつくることにしました。まず、ピートをキッチンテーブルにのせ、生地を伸ばすようにごろごろと転がします。油(ほんとうは水)を少々たらしたあと、小麦粉(ほんとうはベビーパウダー)をふりかけ、トマトの輪切り(ほんとうはボードゲームのコマ)をふりかけます。チーズ(ほんとうは紙切れ)をふりかけたあと、「さて、ピート、サラミはどうする?」と、お父さんがたずねましたが、ピートはこたえません。だって、ピートはいま、ピッツァの生地なのです──。

ご機嫌ななめな坊やが、お父さんやお母さんとピザごっこをするお話です。このピザは、くすぐられると笑ってしまいます。「ピッツァは笑ったりしないと思うがね」と、お父さんにいわれると、「ピッツァ職人は生地をくすぐったりしないと思うよ」と、いいかえしたりします。このあと、オーブン(ほんとうはソファ)に入れられて、ピザが焼き上がるころ、ちょうど雨も上がります。小学校低学年向き。

2011年10月20日木曜日

ホットケーキできあがり












「ホットケーキできあがり」(エリック・カール/作 アーサー・ビナード/訳 偕成社 2009)

朝、オンドリの声で目覚めたジャックは、母さんにいいました。「でっかいホットケーキが食べたいなあ」。すると、母さんは笑顔でこたえました。「手伝ってくれないとできないわ」「ぼく、なにを手伝ったらいい?」「この鎌をつかって、畑の小麦をいっぱい刈りとるのよ」

ジャックは、母さんにいわれたとおり、小麦をいっぱい刈りとって、ロバに乗せ、水車小屋にいって、もみ殻を落とし、小麦粉にしてもらいます。それから、ニワトリ小屋から玉子をとってきて、牛の乳をしぼり、クリームをかきまぜてバターをつくり、裏庭からたきぎをどっさりはこんで、地下室からジャムのびんをとってきて、いよいよホットケーキづくりにとりかかります──。

「はらぺこあおむし」(偕成社 1988)で名高いエリック・カールの一冊です。ホットケーキをつくるのに、材料をあつめからはじめる本書では、なかなかホットケーキを焼くまでにはいたりません。でも、ジャックはめげず、母さんのいいつけにしたがって、材料あつめに奔走します。そのかいあって、ラストでは望みどおり、でっかいホットケーキが食べられます。小学校低学年向き。

2011年10月18日火曜日

はなをくんくん












「はなをくんくん」(ルース・クラウス/文 マーク・サイモント/絵 きじまはじめ/訳 福音館書店 1967)

〈ゆきが ふってるよ。
 のねずみが ねむっているよ。

 くまが ねむっているよ。

 ちっちゃな かたつむりが からの
 なかで ねむっているよ。

 りすが きのなかで ねむってるよ。
 やまねずみ(ウッドチャック)が
 じめんのなかで ねむってるよ。〉

ルース・クラウスは、夫のクロケット・ジョンソンとともにつくった「にんじんのたね」や「はろるど」シリーズで高名です。また、マーク・サイモントは「オーケストラ105人」や「のら犬ウィリー」の作者です。このあと、動物たちは、いっせいに目をさまし、鼻をくんくんさせながら一目散に駆けていきます。駆けていった先には、一体なにがあるのでしょう…。絵は、白黒の2色。雪景色と動物たちが、あたたかみをもってえがかれています。そして、最後に一箇所、黄色がつかわれています。小学校低学年向き。

2011年10月17日月曜日

ちいさなたいこ










「ちいさなたいこ」(松岡享子/作 秋野不矩/絵 2011)

昔、あるところに、心のやさしい百姓の夫婦が住んでいました。もう年をとってあまりはたらけなくなったので、遠いところの田んぼをひとにゆずり、うちのまわりの畑にわずかの野菜をつくって暮らしていました。ある年の春、2人は畑にカボチャの苗を植えました。夏がきて、やがて黄色い花が咲き、実がいくつもなると、そのなかに、ひときわ大きなカボチャがありました。「この色つやのいいこと。きっと味も格別でしょう。でも、ふたりでは食べ切れませんねえ」と、2人は子どもでもながめるように、目を細めてカボチャをみつめました。

さて、ある夜のこと、どこからか楽しそうな祭りばやしの音が聞こえてきます。2人が音のほうにいってみると、音はあのみごとなカボチャから聞こえてきます。カボチャからは光がもれ、おじいさんが指で押すと、そこに丸い穴が開き、のぞくとなかには小さな広場があって、親指ほどの男や女が30人ばかり輪になって踊っています──。

松岡享子さんと秋野不矩さんによる絵本です。このあと、2人は毎晩お囃子を聴き、踊りをみるのが楽しみになるのですが、ある晩、いつもの時刻になってもお囃子が聞こえてこなくなります。みると、皮のやぶれた太鼓のまわりで、小さいひとたちが、ひとかたまりになってすわっています。そこで、2人は、細い竹とドングリの皮と、渋を塗った薄い紙をつかって太鼓をつくり、箸でつまんでカボチャのなかにいれてやり──とお話は続きます。子どもの本は、いって帰ってくる話が多いのですが、この作品はそうではなく、その点印象に残る一冊です。小学校低学年向き。

2011年10月14日金曜日

クリスマスのちいさなおくりもの












「クリスマスのちいさなおくりもの」(アリスン・アトリー/作 上條由美子/訳 山内ふじ江/絵 福音館書店 2010)

「今夜はクリスマスイブだよ。どうしてなんにも飾りつけがしていないんだ。どうしてクリスマスのお祝いのしたくができてないんだ」と、一匹のネズミが、椅子の下からキーキー怒っていいました。すると、暖炉の前で寝ていたネコがいいました。「おかみさんは病気で入院しているし、子どもたちだけじゃなんにもできないだろ。だんなさんはすっかりふさぎこんでいるしね」。すると、ネズミはいいました。「ネコさん、あんたがなんとかしてくださいよ」

ネコはネズミたちに指示をだし、子どもたちのくつ下をとりにいかせ、暖炉の前のひもに下げさせます。それから、ミンスパイづくりにとりかかり、それが焼けるあいだ、太ったクモのおばあさんが部屋中にめぐらせたキラキラ光る糸に、ネズミたちが色とりどりの紙をかじってつくったお飾りを飾ります。そして、パイが焼けたころ、サンタクロースがやってきます――。

アトリーは、「時の旅人」(評論社 1981)や「グレイ・ラビットのおはなし」(岩波書店 2000)などを書いた名高い作家です。絵本作品には「むぎばたけ」などがあります。また、山内ふじ江さんは、「黒ねこのおきゃくさま」(ルース・エインズワース/作 福音館書店 1999)の絵を描いたことで高名です。本書は、ネコとネズミが協力してクリスマスのしたくをするクリスマス絵本です。淡い、柔らかみのある色づかいで、ネコもネズミもとても愛らしくえがかれています。小学校低学年向き。

2011年10月13日木曜日

きょうりゅうくんとさんぽ












「きょうりゅうくんとさんぽ」(シド・ホフ/作 いぬいゆみこ/訳 ペンギン社 1980)

博物館へいったダニーは、そこで恐竜に出会いました。「こいつが生きていたらいいのにな。一緒に遊んだらきっと面白いぞ」。そうつぶやくと、上のほうで、「ぼくもそう思うよ」という声がしました。

声のぬしはもちろん恐竜。恐竜に乗ってダニーは町にでかけます。洗濯物がからまないように気をつかい、海に入り、アイスクリームを食べてから動物園へ。一躍注目を浴びますが、みんながほかの動物をみなくなってしまったので、恐竜とダニーは、ダニーの友だちのところにいって遊びます──。

恐竜と散歩をしたダニーのお話です。シド・ホフはユーモラスな絵を描く漫画家で、絵本に「ナガナガくん」、児童書に「ちびっこ大せんしゅ」(光吉夏弥/訳 大日本図書 2010)などがあります。本書の表紙には、「はじめてひとりでよむ本」と銘打たれており、訳者の乾侑美子さんも訳者あとがきで、「できるだけはじめて自分で読む本にふさわしい文章になるように心がけました」と書いています。読みやすい文章と、シド・ホフの明朗でコミカルな作風により、大変楽しい読物絵本になっています。小学校低学年向き。