2011年12月28日水曜日

おはなしばんざい












「おはなしばんざい」(アーノルド・ローベル/作 三木卓/訳 文化出版局 1977)

木の下で本を読んでいたネズミは、イタチに捕まってしまいました。イタチがネズミをお鍋に入れると、ネズミが「待って!」といいました。「このスープはおいしくならないよ。だって、お話ってものを入れてないもの」。そして、お話なんかもっていないというイタチの代わりに、ネズミはお話をはじめました。

イタチに捕まってしまったネズミが、機転をきかせ、お話をつかってそこから逃れるという絵本です。ネズミがするお話はぜんぶで4つ。
「みつばちとどろんこ」
「ふたつのおおきないし」
「こおろぎ」
「とげのあるき」

最初のお話、「みつばちとどろんこ」を紹介しましょう。ネズミの男の子が森を歩いていると、木の上からミツバチの巣が落ちてきて、頭の上に乗っかってしまいました。「きみら、どこかへいっってくれよ。ぼくは頭のてっぺんにハチの巣なんか乗っけておきたくないんだから」。でも、ミツバチたちは、「ずっとここにいるよ」というばかり。男の子はミツバチの巣を頭に乗せたまま、泥の沼にくるといいました。「ぼくも巣をもってるんだ。つまりぼくんちさ。きみたち、ずっとそこにいるなら、一緒にぼくんちにきてもらわなきゃ」。そして、ネズミは泥のなかへ入っていき──。

そして、4つのお話が終わったあと、ネズミがうまくイタチから逃れるさまがえがかれます。小学校低学年向き。

2011年12月27日火曜日

チワンのにしき












「チワンのにしき」(君島久子/文 赤羽末吉/絵 ポプラ社 1994)

昔、チワンの村に、それは美しい錦を織るおばばがいました。ある日、町へいった帰り道、ひょいと道ばたの店をみると、目のさめるような絵がかけてありました。「ほんにまあ、みごとな山里の景色よのお」と、おばばはうっとりとその絵にみとれていましたが、もうとてもたまらず、ありったけのお金をだして、その絵をゆずってもらいました。

それからというもの、おばばはその絵をながめては、ため息ばかりついていましたが、3番目の息子のロロに、「この景色を錦に織ったらどうだ」といわれ、毎日毎日、昼も夜も織り続け、3年後、とうとう素晴らしい錦を織り上げました。

中国西南部にすむチワン族の民話をもとにした絵本です。巻末の君島久子さんによ文章によれば、チワン族の女性たちは錦織りがたいそう上手なことで昔から有名だったそうです。このあと、おばばが織った錦は、ふいの突風にさらわれて、どこかに飛んでいってしまいます。錦をさがしてくれるように、1番目の息子のロモと2番目の息子のロテオに頼みますが、薄情なかれらはそのままおばばのもとを去ってしまいます。そこで、3番目の息子のロロがさがしにでかけ、途中出会った白髪のおばばの助けをかりて、仙女たちのもとにあったおばばの錦を手に入れて──と、物語は続きます。ラスト、おばばの錦が広がる場面は圧巻です。小学校中学年向き。

2011年12月26日月曜日

海のおばけオーリー












「海のおばけオーリー」(マリー・ホール・エッツ/作 石井桃子/訳 岩波書店 1979)

ある港のそばの海辺で、アザラシの赤ちゃんが生まれました。お母さんは、赤ちゃんが生まれてから、いく日もごはんを食べていませんでした。そこで、ごはんを食べに海に入っていきました。ところが、海岸にもどってみると、赤ちゃんはいなくなっていました。お母さんが沖で魚をとっているまに、ひとりの水兵が赤ちゃんをみつけ、連れていってしまったのでした。

水兵は、少しはなれた海辺の村で、動物屋の主人に赤ちゃんを売ろうとします。主人は、「なぜ、こんな赤ん坊を親からはなしたんだね。こんなに小さくては死んでしまうよ」と、赤ちゃんを買いとって、オーリーという名前をつけて、ミルクをやって育てます──。

「もりのなか」で高名な、マリー・ホール・エッツによる絵本です。絵は白黒。フキダシこそないものの、漫画のようにコマ割りされています。このあと、大きくなったオーリーは、動物園に売られていきます。ところが、お母さんや海のことを考えて元気がなくなってしまい、そのため館長さんは飼育係に、「今夜だれもいなくなったら、オーリーを水からだし、頭をひと打ちして殺しておくれ」と指示します。ですが、飼育係はオーリーを湖に放し、それから湖にお化けがでるという噂が立ちはじめ…と、物語は続きます。物語の最後、見開きでオーリーがたどった旅がえがかれ、まるでオーリーと一緒に長い旅をしたような気持ちになります。小学校中学年向き。

2011年12月22日木曜日

トラのじゅうたんになりたかったトラ












「トラのじゅうたんになりたかったトラ」(ジェラルド・ローズ/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2011)

昔、インドのジャングルに一頭のトラがすんでいました。すっかり年をとり、獲物をめったにとれなくなってしまったので、骨と皮ばかりになっていました。夜、トラはよく窓から王様の宮殿をのぞきました。王様と家族がおいしそうにごはんを食べているのをみて、いいなあ、オレも仲間に入りたいなあと思いました。

ある日、トラは、召使いが宮殿の庭にじゅうたんを干し、ほこりを払っているのをみかけます。じゅうたんのうちの一枚はトラの毛皮で、思いついたトラは茂みに毛皮をかくし、自分が洗濯ひもにぶら下がります──。

作者のジェラルド・ローズは、「大きなかしの木」を書いたひとです。このあと、ぶじ宮殿に入りこんだトラは、夕食のあとだれもいなくなると、じゅうたんのふりをやめて残りものをたいらげます。トラにとって素晴らしい日々が続くのですが、だんだんふっくらとして、毛並みがよくなってきてしまって…と、物語は続きます。絵は、線画に水彩で着色した、お話によくあったユーモラスなもの。トラのじゅうたんになりたいトラという、意表をついた着想が楽しい一冊です。小学校低学年向き。

ぼくびょうきじゃないよ












「ぼくびょうきじゃないよ」(角野栄子/作 垂石真子/絵 福音館書店 1994)

夕ごはんのあと、ケンはごほんとセキをしてしまいました。あしたは、親戚のお兄ちゃんと釣りにいく約束です。病気なんかになってはいられません。でも、お母さんはケンのおでこに手を当てて、「おやっ、熱があるわ」。それから、ケンの胸に耳を当て、「まあ大変。ひゅーひゅー音がしてる」。

水枕をしてすぐベッドに入ったケンは、ぼく病気じゃないのに怒ります。すると、だれかがドアをノックして、開けてみると、そこには白衣を着てメガネをかけた大きなクマがいて──。

カゼ気味だった男の子が、クマ先生の診察によって元気になるという絵本です。絵は、おそらく水彩を色鉛筆でえがかれたもの。大きくて頼りがいがあるクマ先生の感じが、じつによくでています。このあと、クマ先生はケンに、クマ式うがいと、クマ式熱さまし、それからクマ式ねんねをほどこします。ケンが読んでいる本のなかに「ネコのオーランドー」があるのはご愛嬌でしょう。小学校低学年向き。

2011年12月20日火曜日

ヨリンデとヨリンゲル












「ヨリンデとヨリンゲル」(グリム/原作 ベルナデッテ・ワッツ/絵 おさなぎひとみ/訳 ほるぷ出版 1982)

昔、大きな森の真ん中に古いお城がありました。お城には、年をとった魔女がひとりですんでいました。もし、だれかがお城まであと百歩というところまで近づいたら、魔女はそのひとに魔法をかけて、身うごきがとれないようにしました。また、お城に近づいたのが若い娘なら、魔女はこの娘を小鳥の姿に変え、かごに閉じこめてお城につれていきました。お城には、そんな小鳥の入った鳥かごがもう7千個もありました。

さて、ある日のこと、もうすぐ結婚することになっていた娘のヨリンデとその恋人のヨリンゲルは、二人きりになりたくて、森に入っていきました。ところが、二人は知らないうちにお城に近づきすぎてしまいました。それまで歌をうたっていたヨリンデは、ヨナキウグイスの姿になって、「ツィキュート! ツィキュート! ツィキュート!」と叫びました。そして、フクロウに化けた魔女があらわれ、ヨナキウグイスを捕まえていきました。

グリム童話をもとにした絵本です。このあと、身うごきがとれなくなっていたヨリンゲルは、魔女に魔法を解かれます。しかし、ヨリンデは返してもらえそうになく、打ちひしがれたヨリンゲルは、知らない村で羊の番をして暮らしはじめます。ある晩、ヨリンゲルは夢をみます。それは、赤い花の力により魔法が解けるという夢で、目を覚ましたヨリンゲルは花をさがしにでかけて…と物語は続きます。ワッツの初期の作風である、暗く神秘的な絵が魅力的な一冊です。小学校低学年向き。

2011年12月19日月曜日

あかいぼうしのゆうびんやさん












「あかいぼうしのゆうびんやさん」(ルース・エインズワース/作 こうもとさちこ/訳と絵 福音館書店 2011)

手紙をだしたいと思ったとき、動物や鳥たちは、大きな石の下に手紙を置きました。でも、手紙を届けてくれる郵便屋さんがいなかったので、みんなは自分に手紙がきているかどうか、石の下をのぞいてみなければなりませんでした。石の下をのぞきにいかないと、手紙が何週間も置きっぱなしになり、カブトムシが封筒のすみをかじったり、カタツムリが銀色のすじをつけたりすることになりました。そこで、動物たちは、郵便屋さんをきめることにしました。

郵便屋さんには3匹の動物が名乗りをあげます。「ぼくは木に登るのが上手だから、木にすんでいる動物たちにも手紙を配達できる」と子ネコ。「ぼくなら木の枝から枝へ飛びうつっていけるから、地面がどろんこでも手紙を汚さないよ」とリス。「ぼくは口にものを食わえてはこぶのになれているから、手紙を落としたり絶対しないよ」とイヌ。じつは、コマドリも郵便屋さんになりたいなあと思っていたのですが、ほかの動物たちがみんな立派にみえたので、首をかしげてみんなのいうことを静かに聞いていました──。

作者のエインスワースは「こすずめのぼうけん」などで高名です。絵は、線画に水彩で着色した、余白を充分にとったさっぱりしたもの。このあと、子ネコとリスとイヌとで、ためしに一日ずつ、代わりばんこに郵便屋さんをやってみて、だれが一番郵便屋さんにふさわしいかをみてみることになります。ですが、3匹はそれぞれヘマをしてしまい、そこで…と物語は続きます。最初の見返しでは手紙を食わえていないコマドリが、後ろの見返しでは食わえているところなど、細かいところまで楽しい一冊です。小学校低学年向き。