2013年4月9日火曜日
根っこのこどもたち目をさます
「根っこのこどもたち目をさます」(ジビレ・フォン・オルファース/絵 ヘレン・ディーン・フィッシュ/文 いしいももこ/編訳 童話館出版 2003)
春が近づいてきた地面の下で、不思議なことが起こりはじめていました。土のお母さんが、「さあ、起きなさい。春がきますよ。仕事をはじめなくてはいけません」と、根っこの子どもたちに、声をかけてまわっていたのです。はじめは眠くてたまらなかった子どもたちも、伸びをしたり、あくびをしたりしているうちに、自分たちが起きるときがきたのだとわかって喜びました。
根っこの女の子たちは、春に着る服を縫い、土のお母さんにできあがった服をみせにいきます。そのあいだ、男の子たちは、カブトムシやテントウムシや、バッタやハチやホタルの目をさましてやります。そして、虫たちのからだをよく洗い、ブラシをかけ、春の色を塗ってやります。
根っこの子どもたちの仕事をえがいた一冊です。絵は、古い絵本らしく(原書は1906年刊)、古風な味わいのもの。草花や虫といった小さなものたちに、愛おしい視線がそそがれています。このあと、なにもかも用意ができたとき、春がやってきます。根っこの子どもたちは春夏秋と楽しくすごし、冬がやってくると、また土のお母さんのもとへ帰っていきます。小学校中学年向き。
以下は余談です。本書は「ねっこぼっこ」というタイトルで、1982年と2005年に翻訳が出版されています。冒頭の訳文を引用してみましょう。
「ねっこぼっこ」(ジビュレ・フォン・オルファース/作 生野幸吉/訳 福武書店 1982)
《「お起き、お起き、
こどもたち、
さあ、もうすぐ
春がきますよ!」
そのこえをきくと、こどものむれは
めさまし、せのびし、
きちんとなおす、
冬のあいだに、みだれたかみを。》
「ねっこぼっこ」(ジビュレ・フォン・オルファース/作 秦理絵子/訳 平凡社 2005)
《「さあ おきなさい こどもたち
もうすぐ 春が やってくる」
ねっこぼっこは うーんと せのび
くしゃくしゃの かみ なでつける》
両者とも調子のいい文章で、「根っこのこどもたち…」の散文とはちがいます。原書は、絵も歌もオルファースの手によるものだと、生野訳の解説にあります。ということは、「根っこのこどもたち…」のほうは、ヘレン・ディーン・フィッシュが文章をつけた別の版からの翻訳ということになるのでしょうか。なお、オルファースについては、秦訳のものが一番詳しい解説を載せています。
さらに余談ですが、金子みすずの詩に、似た着想のものがあります。前半を引用してみましょう。
「金子みすず全集 2」(金子みすゞ/著 ジュラ出版局 1984)より、「土と草」。
《母さん知らぬ
草の子を、
なん千萬の
草の子を、
土はひとりで
育てます。
……》
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