2012年4月10日火曜日

たんじょうび









「たんじょうび」(ハンス・フィッシャー/作 福音館書店 1979)

森のそばの野原に、リゼッテおばあちゃんの家がありました。おばあちゃんは、オンドリを1羽、メンドリを6羽、アヒルを7羽、ウサギを8匹、それにヤギを1匹飼っていました。それから、マウリとルリという2匹のネコと、ベロという犬がいました。マウリとルリとベロは、うちの仕事もしましたが、ついでにいたずらもやりました。

さて、76歳の誕生日を迎えたおばあちゃんは、村へ買いものにいき、牧師さんの家で少しおしゃべりしてこようとでかけていきます。そこで、ベロとマウリとルリは、おばあちゃんの誕生日のお祝いをしようと、動物たちをあつめます──。

「ながぐつをはいたねこ」などで名高い、フィッシャーによる絵本です。絵は、軽妙な線でえがかれ、ところどころ着色されたもの。文章は現在形を多用し、絵と同様、いきいきしています。。このあと、ウサギたちはロウソクを76本買いにいき、メンドリたちはタマゴを36個生み、ヤギはテーブルに飾る花をつみ、マウリとルリとベロはケーキを焼いて…と、お祝いの準備をします。最後のページにいる子ネコは、きっと「こねこのぴっち」にでてくる、ぴっちなのでしょう。小学校低学年向き。

くいしんぼうのはなこさん











「くいしんぼうのはなこさん」(いしいももこ/文 なかたにちよこ/絵 福音館書店 1979)

ある日、お百姓の家に子ウシが生まれました。顔の真ん中に鼻がにゅっと突きでていたので、家のひとたちは、はなこという名前をつけました。

はなこはとてもわがままで、干し草をやれば干し草はいや、トウモロコシをやれば青いクローバーがほしいといいます。春になり、牧場に連れていかれたはなこは、ほかの子ウシたちと一緒にされます。「これで、はなこも大勢の友だちとつきあって少しはわがままも直るだろう」と、お百姓は思うのですが──。

絵は油絵でしょうか。ウシの造形が大変みごとです。このあと、子ウシたちはチャンバラをはじめ、はなこはそれに勝ち抜いて牧場の女王になります。おかげで、はなこはさらにわがままになるのですが、ある日おイモとカボチャを食べすぎて…とお話は続きます。石井桃子さんの落ち着いた語り口と、色鮮やかな絵が楽しい一冊です。小学校低学年向き。

2012年4月6日金曜日

ぞうのババール












「ぞうのババール」(ジャン・ド・ブリュノフ/作 やがわすみこ/訳 評論社 1976)

大きな森の国で、小さなゾウが生まれました。名前はババールといいました。ババールはすくすくと大きくなりましたが、ある日、母さんにおんぶしてもらって散歩していたところ、悪者の狩人があらわれて、母さんを撃ってしまいました。狩人につかまりそうになったババールは逃げだし、どんどん逃げて、とうとう町に着きました。

町についたババールは、大金持ちのおばあさんと出会います。ひとを喜ばせるのが大好きなおばあさんは、ババールに財布をくれます。そのお金で洋服をあつらえて、ババールはおばあさんと一緒に暮らしはじめます──。

「ぞうのババール」シリーズの1作目です。副題は「こどものころのおはなし」。絵は、線画に薄く着色された、お話によくあったもの。このあと、おばあさんの家で暮らして2年たったある日、ババールの前にいとこのアルチュールとセレストがあらわれます。いとこたちを歓待したババールは、2人と一緒に森に帰ることにして…とお話は続きます。最初こそ悲しい出だしですが、そのあとはあきれるほどなにもかもうまくいく読物絵本です。子どもはきっと、なにもかもうまくいくお話を読みたくなるときがあるのだと思います。小学校低学年向き。

2012年4月5日木曜日

くろうまブランキー












「くろうまブランキー」(伊東三郎/再話 堀内誠一/絵 福音館書店 1980)

原っぱの真ん中の小さなお百姓のところで、ブランキーという名前の真っ黒な子馬が生まれました。ブランキーは、お金持ちになった主人の家をつくるために、大きな石をはこんだ重い荷馬車を引きました。立派な家ができましたが、ブランキーは家のそとで寝ました。主人が、ブランキーのすむ小屋をつくってくれなかったからです。

ブランキーは年をとり、大きな荷物をはこぶことができなくなってしまいます。「このおいぼれ馬め!」と、主人に力一杯たたかれたブランキーは、道の上に倒れてしまうのですが――。

絵は、油絵のよう。このあと、その晩はちょうどクリスマスの晩だったので、ブランキーのもとに天からサンタクロースがやってきます。ブランキーはもう叩かれる心配をせず、サンタのそりを引くようになります。静かな印象のクリスマス絵本です。小学校低学年向き。

2012年4月4日水曜日

彼の手は語りつぐ












「彼の手は語りつぐ」(パトリシア・ポラッコ/作 千葉茂樹/訳 あすなろ書房 2001)

南北戦争に参加した、15歳の白人の少年シェルダンは、傷を負い、2日ほど草原で横たわっていました。すると、同じくらいの年の、シェルダンと同じ北軍の制服を着た黒人の少年があらわれました。少年はシェルダンを介抱し、「ひところにじっとしてたら敵に見つかっちまう。歩き続けないとだめなんだ」と、シェルダンをかつぎ上げ、よろめきながら歩きだしました。

身をかくすために地面に伏せるうちに、顔も口のなかも土まみれになりながら、2人は進みます。気がつくと、シェルダンはベッドに横たわっています。そこは、モーモー・ベイという黒人少年のお母さんの家。助けてくれた少年はピンクス・エイリーと名乗ります。「おまえさんの傷が治ったら、すぐここを発とう。おれたちがここにいると、モーモー・ベイがあぶないんだ」と、ピンクス・エイリーはいうのですが──。

南北戦争を題材にした絵本です。絵は、鉛筆による線画に、おそらくマーカーで色づけしたもの。本文は〈ぼく〉というシェルダンの1人称。本文の前後には、この物語の成り立ちが記されています。「わたしは、この物語が実話だということを知っています。シェルダン・ラッセル・カーティス本人が、娘のローザに語った話だからです。ローザ・カーティス・ストウェルは、その娘、エステラに語りつぎました。そして、エステラ・ストウェル・バーバーは、息子ウィリアムに。ウィリアムは、その娘パトリシア、つまりわたしに語ってきかせました」。物語はこのあと、過酷なできごとが待っています。小学校高学年向き。

2012年4月3日火曜日

ふしぎの森のミンピン












「ふしぎの森のミンピン」(ロアルド・ダール/作 パトリック・ベンソン/絵 おぐらあゆみ/訳 評論社 1993)

ビリーはずっと前から“あやまちの森”と呼ばれる大きな黒ぐろとした森を探検してみたいと思っていました。でも、ママはいいました。「あの森には、チヲスイ・ハヲヌキ・コナゴナニシテポイがいるの。そいつは鼻から熱い煙を吹きだしながら追っかけてくるの」。ビリーは、ママはぼくを怖がらせようとしているだけだと思いました。

ある日、ビリーは窓から抜けだし、“あやまちの森”に入りこみます。すると、荒あらしい鼻息の音が聞こえ、オレンジ色の煙がビリーのほうにむかってきます。あれが、チヲスイ・ハヲヌキ・コナゴナニシテポイなんだ、とビリーは命からがら逃げだすのですが──。

カバー袖の文章によれば、本書はロアルド・ダールが子どものために書いた最後の作品だということです。絵を描いたのは「よるのおるすばん」のひと。線画に水彩で着色された、とても細密にえがかれた絵は、じつに迫力と雰囲気があります。このあと、木によじ登ってバケモノをやりすごしたビリーの前に、ミンピンと呼ばれる小人たちがあらわれます。ビリーは、バケモノを退治する作戦を考え、ミンピンと協力し、白鳥の背に乗って…と物語は続きます。そして、バケモノを退治しても、まだまだミンピンとビリーの物語は続きます。印象的な絵とともに語られた、物語の楽しさに満ちた一冊です。小学校中学年向き。

2012年4月2日月曜日

はたらきもののじょせつしゃけいてぃー











「はたらきもののじょせつしゃけいてぃー」(バージニア・リー・バートン/作 いしいももこ/訳 福音館書店 1987)

けいてぃーは、キャタピラのついている、赤い立派なトラクターでした。いろんな部分品をつけると、ブルトーザーになったり、除雪車になったりしました。ジェオポリスという町の道路管理部ではたらいていて、夏のあいだはブルトーザーになって道を直し、冬になり、雪が降ると、部品をとりかえ除雪車となりました。

冬、雪が降りはじめましたが、まだ少しなので、けいてぃーの出番にはなりません。でも、ある日、とうとう大雪が降り、けいてぃーの出番がやってきます。出動したけいてぃーは、雪の下に埋もれたジェオポリスの町を、どんどんかき分けていきます──。

「ちいさいおうち」で名高いバートンによる絵本です。本書もまた古典として知られています。作中、ジェオポリスの地図やトラクターの種類などが細ごまえがかれていて、みているだけで楽しくなります。町のひとたちは、みんなけいてぃーを頼りにしていて、警察も郵便屋さんも消防署も、「頼みます!」というと、けいてぃーは「わたしについてらっしゃい」とこたえます。物語はこびも、レイアウトも非常に工夫され、見所が満載。くたびれても仕事を投げださない、はたらきもののけいてぃーに感心することうけあいの一冊です。小学校低学年向き。

余談ですが、けいてぃーは原文では“She”がつかわれています。「マイク・マリガンとスチーム・ショベル」にでてくる、スチーム・ショベルのメアリーアンも“She”ですし、「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」のちゅうちゅうも“She”がつかわれているので、女の子のようです。