「夢を追いかけろ」(ピーター・シス/作 吉田悟郎/訳 ほるぷ出版 1992)
昔、イタリアのジェノバにひとりの男の子が生まれました。名を、クリストファー・コロンブスといいました。クリストファーは、大きくなればお父さんの仕事を継いで、毛織物職人になることに決まっていました。ですが、マルコ・ポーロの「東方見聞録」を読んだクリストファーは、金銀財宝のあふれる世界へ旅することを夢みていました。
成長したコロンブスは、ヨーロッパ中の航海を経験します。そして、大西洋を横切ってアジアにゆきつく航路をみつける決心をし、そのために必要な帆船や食料、乗組員を用意するお金をだしてくれる後援者をさがします。何年にも渡る後援者さがしの果て、コロンブスの計画に心をうごかされたスペインのイザベル王女は、夫のフェルナンド王を説得し、ついに1492年8月3日ニーニャ号、ピンタ号、それに旗艦のサンタ・マリア号は、スペインのパロスの港を出発します──。
クリストファー・コロンブスについての伝記絵本です。副題は「クリストファー・コロンブスの物語」。ピーター・シスのえがく絵は、細部のみどころが満載です。絵の独特の味わいは、石膏を重ね塗った表面に、油彩とインキと水彩とグワッシュを用いたという、フレスコ画に似た技法でえがかれたことからきているようです。
巻末の、訳者による解説も充実しています。それによれば、コロンブスの生涯については、その幼年時代のことも、西まわりの大西洋航海の援助をとりつけるため西欧諸国の宮廷を訪ねまわったことについても、はっきりしたことはあまりわかっていないのだそうです。訳者が書いているとおり、航海のさいの積荷や船隊の編成などについては、絵本「コロンブスの航海」(ピエロ・ヴェントゥーラ/絵 ジアン・パオロ・チェゼラーニ/文 吉田悟郎/訳 評論社 1979)により詳しくえがかれています。
また、作者のピーター・シスは、冒頭の「読者のみなさまへ」で、こう書いています。コロンブスが当時ながめていたであろう地図には、ヨーロッパの周囲が高い壁に囲まれ、壁の外側には怪物が待ちうけているといったものがありました。「鉄のカーテン」といわれた「壁」に囲まれた国に生まれ育ったシスは、それをみて、この絵本をつくりあげようという気持ちになったそうです。その気持ちは、扉の絵によくあらわれています。小学校中学年向き。
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