「やまなし」(宮沢賢治/文 川上和生/絵 三起商行 2006)
2匹のカニの子が青白い水の底で話をしていました。「クラムボンは笑ったよ」「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」。2匹が話していると、あたりはぱっと明るくなり、日光が水のなかに降ってきました。波からくる光の網が、底の白い岩の上でゆらゆら伸びたりちぢんだりし、泡や小さなゴミからは、まっすぐな影の棒が斜めに水の中に並んで立ちました。
頭上をお魚がいったりきたりしはじめたかと思うと、突然青びかりのようなものが飛びこんできます。次の瞬間、お魚も青びかりもいなくなってしまいます。カニの兄弟がぶるぶるふるえていると、お父さんカニがやってきて、「そいつは鳥だよ。かわせみというんだ」と教えてくれます──。
宮沢賢治の「やまなし」を絵本にしたものです。絵は、日本画風の、水の中の情景が美しくえがかれたもの。「まっすぐな影の棒が斜めに水の中に並んで立って」いるところなど、原文のままに美しく再現されています。巻末には「言葉の説明」がついており、たとえばこんな風に言葉の説明されています。
〔クラムボン〕賢治の造語。それが何かはわからない。
〔樺の花〕岩手県ではヤマザクラのことも樺と呼ぶ。「白い樺の花びら」という表現から、ここではヤマザクラをさしていると思われる。
〔イサド〕賢治の造語。カニの子たちが行きたがる楽しい場所だと思われる。
宮沢賢治の文章の印象をよく絵にすくいとった出色の一冊です。小学校中学年向き。
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