「すばらしいとき」(R.マックロスキー/作 わたなべしげお/訳 福音館書店 1992)
メイン州ペノブスコット湾の入江に浮かぶ小島に住む、作者の暮らしから生まれた絵本です。文章は2人の娘に語りかけるように書かれています。
〈早朝のきりの朝、なぎさにたつと、
まるで、なにもない世界のはしに、
ひとりぼっちでたっているように 感ずるだろ。
すると、なにもない世界から、
しゅうっ しゅうっ という音が きこえてくる。
ひとりぼっちじゃない。いるかのかぞくが ちかくにいる。
アクロバットのように 身をひるがえし、
海のなかの にしんを たべている。朝ごはんだよ。〉
季節は春から夏へ──。
〈島のちっちゃなみさきの岩は 年をへた岩だ。
地球が若かったとき、岩は、火のように
あつかった。おしつぶすような重さで
氷河が 地球をおおったとき、岩は
氷のように つめたかった。
けさ、岩は、太陽にてらされて
あたたかい。そして、あそびにきた
子どもたちの うれしそうな声で
にぎやかだ。〉
クライマックスは嵐の場面です。本土へいって食料とガソリンを大急ぎで買いこみ、手こぎボートを水ぎわから、ずっとはなれたところに引っ張り上げます。たき木をはこび、発電機にガソリンをいっぱい入れ、台所の棚に食料品をのせます。すると、静かに風が吹きはじめ、雨が降りはじめます。そして、嵐がすぎ去ると、大きな木が道をふさいで倒れています。
〈あるきなれた小道や 林の道を、きょうは
あるけないけれど、たおれた巨人のような
木のこずえを さぐったり、これまで
だれもあるかなかった みきや枝の上を
あるけるんだ。〉
絵は、透明感のある、めりはりの効いた水彩。美しい絵と文章によってつくられた、素晴らしい一冊です。1957年度コールデコット賞受賞。大人向き。
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