2012年1月25日水曜日

まほうのえのぐ










「まほうのえのぐ」(林明子/作 福音館書店 1997)

よしみのお兄ちゃんは、絵の具とスケッチブックをもっていました。お兄ちゃんが絵を描いているのをみると、よしみはいつでも、「わたしも絵の具で描きたい」といいました。でも、お兄ちゃんはいつでも、「だめだめ」といいました。ある日、よしみはまた「わたしも絵の具で描きたい」といいました。よしみが絵の具箱をつかんではなさないので、お兄ちゃんは「しょうがないなあ」と、よしみに絵の具箱を貸してくれました。

よしみは、さっそく青、黄色、赤と絵の具をつかってお絵かきをはじめます。が、色が混ざって泥んこのような茶色になってしまいます。パレットと水入れを洗ってもどってくると、よしみの足元からヘビがしゅるしゅるとでてきて、赤い絵の具をくわえて森へ入ってしまいます。「だめ、それはお兄ちゃんのだから」と、ヘビを追いかけて森へ入っていくと──。

左ページに文章があり、右ページに絵がある構成です。絵は素晴らしいできばえで、見飽きることがありません。このあと、森に入りこんだよしみは、動物たちがお絵描きをしているところに出くわします。よしみの姿をみて、動物たちは一度去ってしまうのですが、またもどり、みんなでお絵描きをします。絵本を閉じると、裏表紙によしみの描いた絵があらわれるのですが、となりにシャクトリムシの描いた絵があるのが洒落ています。小学校中学年向き。

2012年1月23日月曜日

ねこのオーランドー












「ねこのオーランドー」(キャスリーン・ヘイル/作 脇明子/訳 福音館書店 1992)

オーランドーは、とってもきれいなマーマレード色のネコでした。奥さんのグレイスとのあいだには、小さな子ネコが3匹いました。三毛猫がパンジー、真っ白なのがブランシュ、石炭みたいに真っ黒なのがティンクルといいました。オーランドーは一家そろってキャンプにいきたいと思っていました。「おまえが留守になったらネズミどもがどんな悪さをするか考えてもごらん」と、ご主人はいいましたが、オーランドーが頑張るので、とうとうご主人はテントをひとつ注文しました。

一家は車に乗りこんでキャンプにでかけます。テントを張るのにいい場所をみつけ、魚をつかまえたり、ハイキングにいったり、お絵かきをしたり、キャンプファイアをしたりと楽しくすごします。

タテ37センチ、ヨコ27センチの、とても大きな絵本です。作者のキャスリーン・ヘイルは、自分の飼い猫をモデルに本書を描いたそうで、ネコのしぐさがじつによくとらえられています。キャンプにでかけたオーランドー一家は、日々を楽しくすごすことに余念がありません。そんな幸福な毎日がていねいにえがかれています。小学校中学年向き。

2012年1月20日金曜日

トム












「トム」(トミー・デ・パオラ/作 福本友美子/訳 光村教育図書 2008)

トミーのおじいちゃんは、いつもトミーに、「わたしとおまえは名前がよく似てるだろう? だから、おじいちゃんと呼ばずにトムと呼んでおくれ」といいました。トミーは日曜日になると、パパやママと一緒に、トムとナナ(トミーのおばあちゃん)の家に遊びにいきました。トムは、いつもきまって、大きな声で新聞のマンガを読んでくれました。「どうぶつのおまつり」というトミーのお気に入りの詩を読むときは、身振り手振りをつけました。トムとトミーが笑い転げると、ナナがやってきて、「トム・ダウニー! しょうがないねえ、子どもみたいに!」というのでした。

トムとナナは食料品店をやっています。店にでるのはナナで、トムは奥で肉を切ります。ある日、トムはトミーに、切り落としたチキンの頭をひとつ渡してこういいます。「これを庭に埋めてごらん。3週間絶対さわらずに待っていたら、チキンが生えてくるんだぞ」。そこで、トミーはチキンの頭を庭に埋めるのですが──。

おそらく、作者トミー・デ・パオラの自伝的な絵本です。このあと、トミーは3週間待っていられず、埋めたチキンを掘り返してしまいます。それをトムに告げると、トムはこんど、腱を引っ張ると指が開いたり閉じたりする、チキンの足を2本くれます。トミーはそれをきれいに洗い、お母さんから借りたマニキュアを爪につけ、腱を引っ張る練習をして学校にいき…。いたずら好きのおじいちゃんとの交流をえがいた一冊です。小学校中学年向き。

2012年1月19日木曜日

はじめてのかり









「はじめてのかり」(オノン・ウルグンゲ/作 唐亜明/作 ムンフジン・チュールテミン/絵 福音館書店 2005)

モンゴルの大草原に住むバートルは、ある冬の日、父さんにシカ狩りにつれていってもらえることになりました。母さんが縫ってくれた、狩りのときに着る特別にあたたかい服を着て、父さんと一緒に馬を走らせました。山あいの窪地にテントを張り、一泊すると、父さんは狩りにでかけ、バートルと叔父さんは留守番をしました。

夕方、父さんはシカをしとめて帰ってきます。バートルは父さんにお願いし、次の日、一緒に狩りに連れていってもらいます。夕方、父さんはバートルを湖に連れていき、こういいます。「この湖の水は塩辛いので、夜になるとシカが塩をなめにやってくる。いいか、バートル。静かにしているんだぞ。ちょっとでも物音をたてると、シカが逃げてしまうからな」

モンゴルを舞台にした絵本です。絵はおそらく水彩。凍てつくような寒さや、草原の雄大さなどが、みごとに表現されています。このあと、夜、湖でシカを待っていると、湖のむこうに光が明滅して、バートルは思わず「こわい」と声をあげてしまいます。それで、その日の狩りは終わりになり、バートルは声をあげたことを恥じるのですが、「あれはトラの目だ」と父さんはいいます。そして、バートルはトラとイノシシのたたかいに立ち会うことになり…と、物語は続きます。自然の厳粛さが感じられる、骨太な一冊です。小学校低学年向き。

2012年1月18日水曜日

ほしのむすめたち












「ほしのむすめたち」(マーガレット・ベミスター/再話 羽根節子/訳・絵 福音館書店 2005)

昔、深い森にウォーピーという若者が住んでいました。ある日、けものを追って森のはずれまできてしまったウォーピーは、草の上に輪のような跡がついているのをみつけました。不思議に思ったウォーピーが隠れてみていると、空から美しい歌声とともに、小枝で編んだかごが降りてきました。かごには12人の娘たちが乗っていて、かごが地面に着くと、娘たちは輪にそって踊りだしました。

ウォーピーは、白い服を着た娘が気に入り、飛びだして捕まえようとしますが逃げられてしまいます。次の日、フクロネズミに姿を変えて待ちますが、娘たちに感づかれ、また逃げられてしまいます。その翌日、ウォービーはネズミの家族が住んでいる切り株を輪のそばまではこび、自分もネズミに姿を変えます。空から降りてきた娘たちは、ネズミを踏みつけはじめ、ウォーピーも白い服の娘に踏みつぶされそうになるのですが、そこで人間の姿にもどり、娘を腕に抱きしめます──。

カナダ・インディアンの昔話をもとにした絵本です。このあと、ウォーピーは娘を妻とします。ウォーピーがいつも優しかったので娘も星の世界のことを忘れて、ウォーピーの子どもをもうけます。ところが、ある日、例の輪に入ったところ、娘は星の世界のことを思いだし、かごを編んで子どもと一緒に空に帰ってしまい…と、お話は続きます。日本の「天女の羽衣」といった昔話によく似ていますが、姿を変えることが多いところが少しちがっています。絵は、とても色鮮やかで、緑や夜の匂いが感じられそうです。小学校低学年向き。

2012年1月17日火曜日

あおい玉あかい玉しろい玉











「あおい玉あかい玉しろい玉」(稲田和子/再話 太田大八/絵 童話館出版 2006)

昔、ある山のふもとのお寺に、和尚さんと小僧が住んでいました。寺の裏山には、秋になると栗がたくさん実りました。ある日、夢中で栗を拾っていた小僧は、遠くの山まできてしまい、とうとう日が暮れてしまいました。向こうに明かりがみえたのでいってみると、小さな家があり、おばばが囲炉裏端で背中あぶりをしていました。小僧はおばばに、「今晩ひと晩泊めてくなんせ」と頼みました。

こうして、小僧はおばばの家に泊まることになりますが、モチだといっておばばが差し出したのはカエルですし、また、シラミをとってくれといわれて頭をみると、ミミズやムカデがうようよでてきます。「このおばばは人間ではねえな」と、小僧は怖くなってきて──。

日本の昔話をもとにした絵本です。お話は、「三枚のおふだ」によく似ています。このあと、小僧はおばばと一緒に寝ることになるのですが、便所にいきたいとお願いし、腰に縄をつけられた格好で便所にいきます。小僧は縄をほどいって便所の柱に結び、お祈りをすると、便所の神様があらわれて、小僧に3つの宝の玉をさずけて…と、物語は続きます。文章は、昔話風の語り口調で、冒頭はこんな風です。「むかし、ある山のふもとに お寺があって、おしょうさんとこぞうが、すんでいたって」。小学校低学年向き。

おかねもちとくつやさん












「おかねもちとくつやさん」(ラ・フォンテーヌ/文 ブライアン・ワイルドスミス/絵 わたなべしげお/訳 らくだ出版)

昔、あるところに、貧しいけれどほがらかな靴屋さんが住んでいました。靴屋さんは一日中歌をうたっていたので、店の前にはいつも子どもたちがあつまっていました。靴屋さんのとなりには、お金持ちが住んでいました。お金持ちは、毎晩寝ないでお金を数えていました。

さて、となりの靴屋さんの歌声がうるさくて寝られないお金持ちは、ある日いいことを思いつきます。靴屋さんにすぐくるように手紙を書き、やってきた靴屋さんに、金貨をひと袋あげたのです──。

ラ・フォンティーヌの寓話をもとにした絵本です。このあと、靴屋さんはもらった金貨が気になり、眠らないで、次つぎに隠し場所を変えるはめになります。仕事は手につかなくなり、歌もうたわなくなり、とうとう子どもたちもこなくなってしまうのですが…と、お話は続きます。絵はコラージュのような、にぎやかなもの。場面場面の意図がはっきりしている、ワイルドスミスの明快な作風が味わえます。小学校低学年向き。