2011年11月21日月曜日

そんなときなんていう?










「そんなときなんていう?」(セシル・ジョスリン/文 モーリス・センダック/絵 たにかわしゅんたろう/訳 岩波書店 1979)

《まちの まんなかで ひとりの しんしが、
 みんなに あかちゃんぞうを あげている。
 いつも ほしいと おもっていたから、
 きみも いっとう うちへ もってかえりたい。
 でも、まず しんしは きみを あかちゃんぞうに
 しょうかいする。
 そんなとき なんていう?》

《おしろの そとで たんぽぽと おだまきそうを
 つんでいると、とつぜん おそろしい りゅうが
 あらわれて、あかい けむりを ふきかけた。
 ところが ちょうど そのとき ゆうかんな
 きしが かけつけ、りゅうの くびを ちょんぎった。
 そんなとき、なんていう?》

本書の冒頭にこうあります。

《わかき しんし
 しゅくじょの ための
 れいぎさほうの ほん》

この言葉どおり、本書は、こういう場合どんな風にこたえればいいかを説いた礼儀作法の本です。引用したような、ナンセンスなシチュエーションをえがいたページをめくると、若き紳士淑女が芝居気たっぷりに、「はじめまして」とか「どうもありがとう」とか返事をします。ほかにも、カウボーイに銃を突きつけられたときや、道ばたでワニを踏んづけたとき、飛行機に乗っていて、ひとのうちの屋根に穴を開けてしまったときなどの答えかたが紹介されています。次つぎとあらわれる、ありえない状況と、礼儀正しい受け答えが楽しい一冊です。小学校低学年向き。

2011年11月18日金曜日

星と月の生まれた夜











「星と月の生まれた夜」(D・グティエレス/文 M・F・オリベル/絵 山本厚子/訳 河出書房新社 1994)

昔むかし、はるかかなたの村に、闇夜がきらいなひとりのセニョール(男のひと)が住んでいました。セニョールは太陽の光のなかで、一日中竹かごを編んだり、動物たちの世話をしたり、野菜畑に水をまいたりして楽しく暮らしていました。でも、太陽が山のむこうにかくれると、いつも悲しくなりました。

ある日、太陽が姿をかくしてしまうと、セニョールはいちばん高い山に登り、頂上から叫びました。「おーい! 闇夜ー! 暗くするのをやめておくれよ!」。すると、闇夜はちょっとのあいだ暗くするのをやめました。そして、「光をどこに連れていってしまうんだい?」というセニョールにこたえました。「光は、わたしの後ろにかくれてしまうんじゃよ。わたしにはどうすることもできないんだよ」。

世界民族絵本集の一冊です。本書はベネズエラの絵本。物語も、ベネズエラの昔話から採られたのかもしれません。お話はこのあと、闇夜がいったことをくり返し考えたセニョールが、どうすればいいかわかったぞと、再び山に登っていって…と続きます。絵は水彩。夜空に星や月が輝きだす場面では、月や星がほんとうに光っているようにみえます。小学校中学年向き。

いっすんぼうし











「いっすんぼうし」(いしいももこ/文 あきのふく/絵 福音館書店 1980)

昔、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。2人には子どもがありませんでしたので、それをなによりもさびしく思っていました。そこで、おじいさんとおばあさんは、「手の指ほどの小さい子どもでもひとりあったら、どんなによかろう」と話しあい、お天道様をおがんでは、「どうぞ子どもをおさずけください」とお願いしました。

すると、そのうち、おばあさんのお腹が痛くなって、赤ん坊が生まれました。ところが、その男の子は小さくて、手の指ほどしかありません。おじいさんとおばあさんは驚きましたが、これもお天道様のおぼしめしであろうと、赤ん坊を一寸法師と名づけ、可愛がって育てます──。

ご存知、一寸法師のお話です。石井桃子さんと秋野不矩さんによる仕事は、素晴らしい仕上がりです。このあと、12、3になっても小さいままの一寸法師に、おじいさんとおばあさんはがっかりますし、村の子どもたちは「ちび、ちび」といって、馬鹿にするようになります。そこで、一寸法師はみやこにでることを決意して…と物語は続きます。表紙の絵は、おそらくまだマゲを結うまえの一寸法師でしょう。小学校低学年向き。

2011年11月17日木曜日

あらしのひ












「あらしのひ」(シャーロット・ゾロトウ/作 マーガレット・ブロイ・グレアム/江 まついるりこ/訳 ほるぷ出版 1995)

暑いあつい、田舎の夏の日。もやがうごいて、ほてった空が灰色に変わりはじめました。鳥は鳴かず、小枝もそよがず、風も吹かない、どんよりとした大きな世界が息をとめました。黒い雲が姿をあらわし、干上がった地面に影を落としました。すると、つぎつぎに雲が空をおおい、おしまいにはあたりが夜のよう真っ暗になりました──。

嵐がやってきて去るまでをえがいた絵本です。作者のゾロトウは、「うさぎさんてつだってほしいの」などの作者、画家のグレアムは、「どろんこハリー」の画家として、それぞれ高名です。文章は漢字が多いですが、すべてルビが振られています。本書は、絵だけのページと文章だけのページが交互にくる構成。この構成について、訳者の松井るり子さんは「訳者あとがき」でこう記しています。

「ページを立てて両側から顔をくっつけるようにして、大人が字を読み、子どもが絵をみる。その後ページを寝かせて、親子で絵を見る。そんな時間をもってくださいという絵本作家の声が聞こえてきそうです」

読み終わると、ほんとうに嵐がすぎ去ったような気持ちになる一冊です。小学校中学年向き。

2011年11月15日火曜日

おばあちゃんの魚つり












「おばあちゃんの魚つり」(M.B.ゴフスタイン/作・絵 落合恵子/訳 アテネ書房 1980)

おばあちゃんは、釣りにいくとき朝の5時に目をさまし、それから、いそいでいそいでお皿を洗い、大きな麦わら帽を頭にのせて、さあ出発。ボートにこぎだして、日がな一日釣りをします──。

釣りにいくおばあちゃんの一日をえがいた絵本です。おばあちゃんの釣り針には、コイやマスやナマズや、ときにはでっかいカワカマスもかかります。釣った魚はバターで焼いて夕食に。それから、いそいでいそいでお皿を洗い、あしたの釣りに備えます。絵は、非常なシンプルさでえがかれた線画。いつものようにゴフスタインの絵本はシンプルですが、それでいて、おばあちゃんの暮らしが満ち足りたものと思えます。小学校中学年向き。

2011年11月14日月曜日

ふわふわしっぽと小さな金のくつ












「ふわふわしっぽと小さな金のくつ」(デュ・ボウズ・ヘイワード/作 マージョリー・フラック/絵 羽島葉子/訳 1993)

イースター・バニーとは、たった半日のあいだに、世界中をまわって、子どもたちに幸せを呼ぶタマゴを届けるウサギたちのことです。世界中のウサギのなかから、心がやさしくて、足が速くて、おまけにとても賢いウサギが5匹だけえらばれます。イースター・バニーが年をとってはやく走れなくなると、卵宮殿に住む長老ウサギが、世界中のウサギをあつめ、代わりをつとめるのにもっともふさわしい者をえらぶのです。

さて、あるとき、からだは茶色、しっぽは綿の実のように白くてふわふわなので、ふわふわしっぽという名前の田舎ウサギの女の子が、こんなことをいいました。「大人になったら、わたし、イースター・バニーになるの。いまに見てて!」。それを聞いて、大きな真っ白ウサギや、長い足でビュンと走りまわる野ウサギは笑いました。時がすぎ、ふわふわしっぽは大人になり、結婚して21匹のふわふわしっぽの赤ちゃんを生みました。真っ白ウサギや野ウサギは笑いながら、「おまえの仕事は子守だよ。イースターは、おれたちみたいに立派な男のウサギにまかせとけって」といいました。ふわふわしっぽは、幸せのタマゴを世界中の子どもに贈る夢をあきらめて、自分の子どもの世話をすることにしました。

子どもたちが大きくなると、ふわふわしっぽは銘々に、お掃除や料理や洗濯や裁縫や、歌やダンスのしかたなどを教えました。ある日、イースター・バニーの1匹が年をとってはたらけなくなったので、長老ウサギが新しいウサギをえらぶという話を耳にしました。そこで、ふわふわしっぽは少し悲しい気持ちをおぼえながら、子どもたちを連れて卵宮殿に見物にいくことにしました──。

イースター・バニーを主人公にした絵本です。イースターの説明がカバー袖にあるので、引用してみましょう。

《イースターは、キリスト教を信奉する国々で、もっとも大事なお祭りのひとつ。キリストが死後3日目に復活したことを記念し、また春のおとずれに感謝するお祝いです。イースターの祝日は、春分の日のあとの満月のつぎにくる日曜日。だから、その年によって日付がちがいます。》

《イースターに欠かせないのが、このお話の主人公にもなっているイースター・バニー、幸運をよぶ卵を配るうさぎです。うさぎは、春になるとたくさん子どもを産むので、生命や多産の象徴、卵は復活の象徴といわれています。この日は、ゆで卵にきれいに絵を描いてプレゼントしたり、うさぎの形をしたチョコレートやキャンディーを食べたりして楽しく過ごします。》

絵は古風な、しかしウサギの姿がじつに可愛らしいもの。絵を描いたマージョリー・フラックは、「アンガスとあひる」の作者です。文章は漢字が多いのですが、すべてルビが振ってあります。物語はこのあと、ふわふわしっぽが長老ウサギにみこまれて、イースターバニーの仕事をすることになり…と続きます。ふわふわしっぽの活躍が楽しい読物絵本です。小学校中学年向き

2011年11月13日日曜日

あかいじゅうたん

「あかいじゅうたん」(レックス・パーキン/作 みむらみちこ/訳 ジー・シー 1989)

丘の上のラ・サル通りに、ベルビュー・ホテルという小さなホテルがありました。入口には、しま模様の雨よけがあり、特別の日だけ空色の服を着たドアマンっが、赤いじゅうたんをその下にひろげました。

さて、ある日のこと、ホテルにサルタナ公が泊まりにくることになりました。ドアマンは掃除をし、じゅうたんを広げようと靴のちょっと押しました。すると、じゅうたんはどんどん転がっていき、道路にでて、丘をくだって──。

赤いじゅうたんが、町中をどんどんころがっていくという絵本です。絵は、カラーと白黒が交互にくる構成。白黒の場面でも、じゅうたんだけは鮮やかな赤で彩られています。物語はこのあと、町中を駆けめぐるじゅうたんに、市長が緊急事態を宣言。じゅうたんを逮捕するために大勢の警官が出動するという、とんでもない展開になります。でも、もちろん、最後はなにもかもうまくいきます。小学校低学年向き。