2011年6月9日木曜日

おぎょうぎのよいペンギンくん












「おぎょうぎのよいペンギンくん}(マーガレット・ワイズ・ブラウン/作 H.A.レイ/絵 ふくもとゆみこ/訳 偕成社 2000)

アライグマの家でスープを飲んでいたペンギンくんは、お腹がいっぱいになったので、残りを床に捨ててしまいました。「ちょっと、よくそんなことができますね!」と、アライグマは怒りました。南極育ちのペンギンくんは、マナーというものを知らなかったのです。そこで、アライグマはペンギンくんに、マナーを教えることにしました。

まず、アライグマは「デザート早くう!」と叫ぶペンギンくんをたしなめます。「ひとになにかもってきてほしいときは、そんなふうにいうもんじゃありません。──こういうふうに頼むの。すみませんが、デザートお願いしますって」「ずいぶん長いのね。そんなに長ながいっってたら、いつまでたってもデザートこないよ」「こういわなけりゃ、デザートはますます遅くなります」「わかったよ、ちょっとでも早くでてくるんならいうよ。──お願いします」──。

絵を描いたH・A・レイは、「おさるのジョージ」シリーズや、「ポケットのないカンガルー」などで高名。また、マーガレット・ワイズ・ブラウンは「おやすみなさいおつきさま」や「ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ」などの作者です。このあと、外にでかけたアライグマとペンギンくんは、ダチョウに会ったり、完璧なマナーのもち主であるシャムネコさんのうちで夕食をごちそうになったりします。ペンギンくんとアライグマの、落語のようなかけあいが楽しい一冊です。小学校中学年向き。

2011年6月8日水曜日

青い花のじゅうたん












「青い花のじゅうたん」(トミー・デ・パオラ/再話・絵 いけださとる/訳 評論社 2003)

三日のあいだ、コマンチ族は太鼓の音にあわせて踊りました。ようやく冬が終わりましたが、命をあたえてくれる雨は降りません。生き残ったわずかな子どものなかに、〈ひとりでいる子〉と呼ばれている女の子がいました。両親を飢饉で亡くした〈ひとりでいる子〉は、母さんがつくってくれた人形をとても大切にしていました。

丘の上から、まじない師がもどってきて、大いなる精霊たちのことばを語りました。「人間は、自分たちのことしか考えなくなってしまった。大地から恵みを受けるばかりで、なにも返そうとしない。大いなる精霊たちは、いけにえをささげるようにいっている。われわれがいちばん大切にしているものを燃やして、供えなければならない──」。

毎年、春になると、アメリカ南部テキサス州の丘は青い花におおわれるといいます。本書は、この青い花の由来について語った、コマンチ族の昔話をもとにつくられた絵本です。巻末の「作者のノート」によれば、青い花は「ブルーボンネット」といい、テキサス州の州花になっているそうです。また、ルピナスとか、バッファロー・クローバーとかいろいろな名前があるといいます(ここで、バーバラ・クーニーの素晴らしい絵本「ルピナスさん」を思い出します)。ひとりの女の子の勇気ある献身をえがいた、美しい一冊です。小学校中学年向き。

2011年6月7日火曜日

まあちゃんのながいかみ










「まあちゃんのながいかみ」(たかどのほうこ/作 福音館書店 1995)

はあちゃんと、みいちゃんは長い髪が自慢です。でも、まあちゃんの髪は短いおかっぱです。はあちゃんと、みいちゃんが、背中がぜんぶかくれるくらい髪をのばす、というのを聞いたまあちゃんは、「あたしなんかね、もっとずっとのばすんだからね」といいます。どれくらいのばすかというと──。

橋の上からお下げをたらして魚が釣れるくらい、お下げのロープをびゅーんととばして、牛を捕まえられるくらい、からだに巻けば、そとで寝られるくらい、右のお下げと左のお下げをぴーんと張って木に結べば、うちじゅうの洗濯ものをいっぺんに干せるくらい──。

はあちゃん、みいちゃん、まあちゃんの3人が話す場面はモノクロ、まあちゃんが長い髪について話すところはカラーになります。また、まあちゃんが長い髪について話すところは、しばしば本がタテになります。女の子の話ですが、お話会で読んでみると、その奇想天外ぶりに男の子もよろこびます。まあちゃんの途方もない空想が楽しい一冊です。小学校低学年向き。

2011年6月6日月曜日

きもち












「きもち」(谷川俊太郎/文 長新太/絵 福音館書店 2008)

ほとんど字のない絵本です。男の子が公園で、友だちのおもちゃの車を奪ってしまいます。お母さんと帰る途中、捨てネコをみつけますが、お母さんはかまいません。お医者さんにいき、注射されて、男の子は泣きだします。家では、お父さんとお母さんが口論し、男の子は悪夢をみますが、お父さんとお母さんが枕元にきてくれて、男の子は安心します──。

後半、いままでの場面を解説するように、わずかに文章があらわれます。

〈いろんな きもちが
 うまれては きえ
 きえては うまれる。
 (…)
 こどもも おとなも
 きもちは おんなじ。

 でも じぶんのきもちと
 ひとのきもちは ちがう。
 ひとが どんなきもちか
 かんがえてみよう。〉

絵だけで、登場人物の気持ちをさとらせる描きかたがみごとです。場面が変わると、気持ちもどんどん変わっていき、読んでいてそのことがわかるので、飽きることがありません。何度でも読み返せる出色の一冊です。物語と直接関係はありませんが、長新太さんの描くネコは、なんだか面白い顔をしています。小学校低学年向き。

2011年6月3日金曜日

おどりトラ












「おどりトラ」(金森襄作/文 鄭香/絵 福音館書店 1997)

山をこえた、そのまた山奥に、たくさんのトラが住んでいました。そのなかに、ひまさえあれば踊りをおどっているので、「おどりトラ」と呼ばれているトラがいました。あるとき、おどりトラは、みんなが獲物の鳥を追っている最中に踊りだして、獲物を逃がしてしまいました。そのため、仲間たちから山を追われてしまいました。

さて、山を追われたおどりトラは、一所懸命踊りの腕を磨き、不思議の力を得るようになります。踊ると、大漁豊作になり、病気の子どもも治るのです。踊り上手になったおどりトラの手足は、笛や太鼓の音が聞こえると、ひとりでに踊りだすまでになります──。

韓国・朝鮮の昔話をもとにした絵本です。このあと、おどりトラは昔の仲間がなつかしくなって山にもどり、仲間たちもおどりトラを歓待するために、ごちそうの人間をみつけて木の上に追いつめるのですが──と、物語は続きます。木に登った人間を、はしごをつくって追いつめるあたりから、本をタテにして読む体裁になります。絵は、朝鮮風というのでしょうか。踊りの好きなトラがユーモラスにえがかれています。小学校低学年向き。

2011年6月2日木曜日

スーザンのかくれんぼ












「スーザンのかくれんぼ」(ルイス・スロボドキン/作 やまぬしとしこ/訳 偕成社 2006)

スーザンは隠れるところをさがしていました。というのも、スーザンはクモが大嫌いなのに、兄さんたちはガラスびんに飼っているクモをみせようとするのです。芝生の上で編み物をしているお母さんに隠れ場所を訊いてみると、お母さんは垣根のそばの大きなカシの木を教えてくれました。スーザンがそこに隠れると、垣根ごしに隣りのおばさんが声をかけてきました。そこで、こんどはおばさんに教わり、物置のかげに隠れることにしました。すると、毎週芝刈りにくるゲリーさんに声をかけられました。そこで、こんどはゲリーさんに教わり、大きなバラの茂みに隠れることにしました──。

隠れるところをさがすスーザンのお話です。このあと、スーザンは犬小屋に隠れ、大きな柳の木の下に隠れます。ここまでが前半。後半はお母さんがスーザンをさがして、スーザンの足どりをたどっていきます。

絵はカラーと白黒の絵が交互にくる構成。スロボドキンのえがく水彩には、素敵な明るさがあります。カバー袖の文章によると、この絵本はイタリアの海辺のホテルに泊まっていたとき、本当にあったことをもとにしてえがいたということです。小学校低学年向き。

2011年6月1日水曜日

フルダー・フラムとまことのたてごと

「フルダー・フラムとまことのたてごと」(ロイド・アリグザンダー/作 エヴァリン・ネス/絵 神宮輝夫/訳 評論社 1980)

フルダー・フラム王は、いさましい物語をうたって歩く、吟遊詩人になりたいという願いがありました。古い本を読み、指が腫れあがるほど竪琴の練習をした王様は、仲間にしてもらうために、詩人組合のところにでかけていきました。「なんなりとお試しなされ!」と、王様は自信たっぷりにいいましたが、詩人の長や組合の詩人たちがあれこれ訊くと、おぼえたことはひとつ残らずぱっと飛び散ってしまいました。あげくの果てに、竪琴が手から滑り、こなごなに砕けてしまいました。

すっかり気を落としてしまった王様に、詩人の長は、ひとつの竪琴をさしだします。「あなたはまだまだ勉強しなくてはなりません。この竪琴なら力になってくれるでしょう」。その美しい竪琴は、指がふれるだけで、うっとりするようなメロディが流れでてきます。「これで実力がだせる」と、すっかりご機嫌になった王様は旅にでかけるのですが──。

少々お調子者のフルダー王のお話です。作者のロイド・アリグザンダーは、「プリデイン物語」(評論社 1977)や「人間になりたがった猫」(評論社 1977)といった児童文学で高名です。ちなみに本書は、「プリデイン物語」の別巻の2巻目に当たります。このあと、王様はいろいろと立派なおこないをするのですが、それを大げさにいうたびに、竪琴の糸が切れてしまい──と、物語は続きます。絵は、どんな技法なのかわかりませんが、3色をじつにたくみにつかったもの。「プリデイン物語」を知らなくても楽しめる、じつにユーモラスな読物絵本です。小学校中学年向き。