2012年10月26日金曜日

パイがいっぱい












「パイがいっぱい」(和田誠/作 文化出版局 2002)

マザーグースの訳者でもある和田誠さんがつくった、言葉あそびでいっぱいの歌の絵本です。巻末の文章いわく、「マザーグースのようないくつかの要素と言葉遊びを日本語の中に生かすことができないか、と考えて作ったのがこの本です」。例として、「おどろき もものき」を引用してみましょう。

《おどろき もものき さんしょのき
 うそつき わるがき きゅうけつき
 はやおき はみがき せんめんき
 あにきは のんき おおいびき》
 ……

ほかにも、韻を踏んだり、しりとりをしたり、数え歌があったり、和田さん発明による「てれこ言葉」による歌があったりと、載せられた歌は多種多様。ユーモラスな和田さんの絵とともに、大変愉快な一冊となっています。小学校低学年向き。

2012年10月25日木曜日

うっかりもののまほうつかい












「うっかりもののまほうつかい」(エヴゲーニイ・シュワルツ/作 オリガ・ヤクトーヴィチ/絵 松谷さやか/訳 福音館書店 2010)

昔、あるところに、イワン・イワーノヴィッチ・シードロフという学者がいました。魔法使いでもあり、機械づくりの名人でもある、イワン・イワーノヴィッチは、自分でつくった数かずの発明品のなかでも、ロボ君が大のお気に入りでした。ロボ君は、大きさはネコくらいで、イヌのようにあとからついてきて、人間のようにおしゃべりができました。

ロボ君は、ごはんのしたくもするし、玄関のドアもあけます。夜になると、自分でからだをバラバラにして眠り、朝になると元通りになって、イワン・イワノーヴィッチを起こします。さて、あるときロボ君と森に散歩にでかけたイワン・イワノーヴィッチは、荷馬車に麦を積んで粉引き小屋にむかう男の子に出会います。イワン・イワノーヴィッチが魔法使いだと知った男の子が、「ぼくの馬をネコにできますか」というと、イワン・イワノーヴィッチは「できるとも!」と、馬に動物を小さくする魔法のレンズをむけて──。

作者のエウゲーニイ・シュワルツはロシアのひと。絵を描いたオリガ・ヤクトーヴィッチは「かもむすめ」をえがいたひとです。さて、このあと、魔法のレンズの威力で、馬はネコになってしまいます。それをみて、ロボ君は驚きます。動物を大きくするレンズはこわれてしまったので、ガラス工場(こうば)に直しにだしてあったのです。「馬はネコになったけど、力は馬のままだから、荷車を引っ張れる」と、イワン・イワーノヴィッチは泣きだした男の子をなだめ、ひと月たったら動物を大きくするレンズをネコに向けると約束するのですが──。巻末の著者紹介によると、本書は2008年に亡くなったオリガ・ヤクトーヴィッチの最後の作品だということです。「かもむすめ」のかっちりした作風とはちがって、鉛筆と水彩でえがかれた柔らかみのある絵柄が、よくお話にあっています。小学校中学年向き。

2012年10月23日火曜日

びっくりドラゴンおおそうどう!












「びっくりドラゴンおおそうどう!」(ジャック・ケント/作 なかがわけんぞう/訳 好学社 1984)

朝、ビリィが目をさますと、部屋のなかに子ネコくらいの大きさの可愛いドラゴンがいました。大急ぎでお母さんに知らせると、「ドラゴンなんかいるはずありません!」と、お母さんはあきれたようにいいました。

ビリィはそばによってきて、うれしそうに尻尾を振るドラゴンを無視し、服を着替え、顔を洗って、朝ごはんを食べにいきます。ドラゴンもついてくるのですが、そのときドラゴンはイヌくらいの大きさになっていて──。

作者のジャック・ケントは、「ふとっちょねこ」などを描いたひと。マンガ風の、ユーモラスで親しみやすい作風のもち主です。さて、このあとお母さんはあくまでドラゴンを無視し続けます。すると、ドラゴンはどんどん大きくなり、ついには家いっぱいの大きさになってしまいます。もちろん最後はハッピーエンド。目をそらし続けると、いったいなにがを起こるのか。そんなことを物語っているような一冊です。小学校低学年向き。

2012年10月22日月曜日

おやすみなさいのほん












「おやすみなさいのほん」(マーガレット・ワイズ・ブラウン/文 ジャン・シャロー/絵 いしいももこ/訳 福音館書店 1992)

《よるに なります。
 なにもかも
 みな ねむります。
 おひさまは
 ちきゅうの むこうがわに
 かくれます。

 どこの いえにも
 あかりが つきます。
 そとは
 くらく なります。》

小鳥たちは、みな歌うことも飛ぶこともやめ眠ります。海の底では、小さな魚たちが目をぱっちり開けたまま眠ります。野原のヒツジたちは、一緒にかたまって眠り、サルやライオンや野ネズミたちは、みな森のなかで眠ります──。

古典的名作絵本の一冊です。絵は、太い描線におそらく色鉛筆(クレパス?)で色を塗った、大変落ち着きがあるもの。このあと、帆かけ舟も自動車も飛行機も、カンガルーも子ネコも静かになって眠ります。「子どもがほんとうに眠たくなる不思議な絵本」と、長谷川摂子さんがどこかに書いていたと思います。幼児向き。

2012年10月20日土曜日

ゆきだるま












「ゆきだるま」(レイモンド・ブリッグズ/作 評論社 1978)

文字のない、コマ割りによる絵だけの絵本です。

朝、男の子が目をさますと、外は雪景色。さっそく、外にでて雪だるまをつくります。帽子をかぶせて、マフラーを巻き、ミカンを鼻に、石炭を目とボタンにして、さあ完成。そして夜。目をさました男の子が家のドアを開けると、雪だるまは帽子をとって挨拶をします──。

「スノーマン」というタイトルでも知られた絵本です。アニメーションにもなっています。絵は、おそらく色鉛筆でえがかれた、あたたかみのあるもの。雪だるまもあたたかそうにみえるのが不思議です。さて、このあと男の子は、雪だるまを家のあちこちに案内します。雪だるまはあたたかいものが苦手なので、ストーブではなく冷蔵庫にあたったりします。そして終盤、雪だるまは男の子を連れて空へと舞い上がります。冬のひと晩のできごとをえがいた美しい絵本です。レイモンド・ブリックスの作品はほかに、「サンタのなつやすみ」などがあります。小学校中学年向き。

2012年10月19日金曜日

ノアのはこ船











「ノアのはこ船」(ピーター・スピアー/作 松川真弓/訳 評論社 1986)

あらそいごとを尻目に、神の恵みをうけて暮らしていたノアは、神の言葉を聞き、巨大な箱船をつくりました。箱舟には、家族と、たくさんのつがいの動物たちを乗せました。そのうちに、大雨が降り、大洪水が起こって、地上のものをなにもかも呑みこんでしまいました──。

ノアの箱船伝説をもとにした絵本です。ほとんど文字がなく、お話はコマ割りされた絵によって進みます。本書には、ノアが神の言葉を聞く場面はありません。ブドウをつくっていたノアは、突然巨大な箱船をつくります。おそらく、お話は自明のものとされているのでしょう。見所は、大変よくえがかれたディティールです。草食動物は歩いて船に乗りますが、肉食動物はオリに入れてはこびこまれます。箱船のなかは、動物たちの排泄物だらけ。船内には、池がつくられていて、カバや水鳥が暮らし、ビンのなかにはさまざまな虫が飼われています。そして、箱船はついにアララト山頂に到着。箱船は打ち捨てられ、ノアはまたブドウづくりにはげみます。小学校中学年向き。

2012年10月18日木曜日

ぐりとぐら










「ぐりとぐら」(中川李枝子/文 大村百合子/絵 福音館書店 1967)

 野ネズミのぐりとぐらは、大きなカゴをもって、森の奥へでかけました。

《ぼくらの なまえは ぐりと ぐら
 このよで いちばん すきなのは
 おりょうりすること たべること
 ぐり ぐら ぐり ぐら》

2匹が話しながらいくと、道の真ん中に、とても大きなタマゴが落ちていました。タマゴをみつけた、ぐりとぐらは、目玉焼きにしようか、玉子焼きにしようかと話しあったすえ、カステラをつくることにします。でも、タマゴはあんまり大きくて、もち帰れそうにありません。そこで、2匹はおナベをもってきて、ここでカステラをつくることにします──。

ほとんど、絵本の代名詞となっているような1冊、「ぐりとぐら」です。手元の本の奥付をみると、1967年第1刷、2009年第177刷となっています。さて、このあと、いったんうちに帰ったぐりとぐらは、一番大きなおナベと、小麦粉、バター、牛乳、砂糖、ボール、泡立て器、それにエプロン2枚とマッチをもって、タマゴのところにやってきます。げんこつでは割れなかったので、石でタマゴを割り、牛乳と砂糖と小麦粉を入れて、ボールでよくかき混ぜて、おナベにバターをよく塗って、材料を入れて焼けるのを待っていると、じき森じゅうの動物たちがやってきます──。みんなで美味しいものを食べ、最後にタマゴのカラで、ちょっとしたものまでつくる、大変幸福感に満ちた1冊です。小学校低学年向き。