2012年2月20日月曜日

つきのひかりのとらとーら









「つきのひかりのとらとーら」(フィリス・ルート/文 エド・ヤング/絵 野中しぎ/訳 福武書店 1991)

ジェシカは、またママに叱られてしまいました。本を読んでくれないよって、弟のマイケルが泣くからです。せっかく、とらとーらのお家をつくっていたのに。

夜、ベッドに入ったジェシカは、大きなトラのとらとーらのことを思いえがきます。とらとーらは、月からきた、とても大きなトラです。しっぽを振り立てて、大きなのびをするから、とらとーらの影で部屋が真っ暗になってしまいます──。

トラを夢みるジェシカのお話です。絵は、パステルでえがかれたもの。文章は、ジェシカの語りで記されています。このあと、とらとーらの背に乗ったジェシカは、北極グマに会いにいったり、アフリカのジャングルにいったりします。そして、うちにもどってくると、とらとーらは「弟を食べてあげようか」というのですが…。とても大きく、立派なとらとーらが印象的な、夜の雰囲気に満ちた一冊です。小学校低学年向き。

2012年2月17日金曜日

黒グルミのからのなかに












「黒グルミのからのなかに」(ミュリエル・マンゴー/文 カルメン・セゴヴィア/絵 ときありえ/訳 西村書店 2007)

ずいぶん昔、ポールという男の子が、漁師村近くの小さな家に、母さんと2人で暮らしていました。ある朝、いつもならとっくに台所に立っているはずの母さんの姿がみえませんでした。部屋をみると、母さんはベッドに横たわって目をとじていました。「わたしはもうすぐ死ぬわ死神が、わたしをつれにくるの」

薬を買いに外にでたポールは、浜辺で黒いマントに身をつつみ、大きな鎌をもった老婆に出会います。老婆を死神だと察したポールは、鎌を奪い、刃を石でめった打ちにし、鎌の柄で死神を叩きます。柄をよけようとして、死神がどんどん小さくなると、ポールは死神をつかみ、足もとに落ちていた黒グルミのなかに押しこんで、海に投げ捨ててしまいます。

生死についての絵本です。絵は、手描きとコラージュを組みあわせたもの。彩度の低い絵が、テーマによくあっています。このあと、漁師村にいったポールは、広場で大人たちが魚もウシも殺されないで逃げてしまうし、麦は鎌にかからないと話しているのを耳にします。ポールから話を聞いた母さんは、驚き悲しみ、そこでポールは…と、お話は続きます。最後が悲劇的ではないのでほっとします。小学校高学年向き。

2012年2月16日木曜日

はやおきミルトン












「はやおきミルトン」(ロバート・クラウス/文 ホセ・アルエゴ/絵 エアリアン・アルエゴ/絵 はせがわしろう/訳 ほるぷ出版 1978)

ある日、パンダのミルトンは、早く起きました。そして、遊びにでかけました。でも、おとなりのキバシリのクリープ(木によじ登る鳥)さんも、イノシシのブィッパースナッパー(つまらないひと)さんも、サイのニン・コン・プープ(とんま)さんも、まだ眠っていました。まるで世界中が眠っているようでした。

みんなが眠っているので、ミルトンはテレビをみたり、飛び上がったり、踊ったり、うたったりします──。

ひとりだけ早起きをした、パンダのミルトンのお話です。絵は、柔らかな描線に水彩で色づけされた、ユーモラスなもの。このあと、大地震が起きたり、つむじ風が吹いたりするのですが、動物たちはいっこうに目をさましません。そこでミルトンは、風でめちゃくちゃに散らかってしまった動物たちを、もといたところにもどしてやります。家族のなかで、ひとりだけ目をさましてしまった感じがよくでた一冊です。小学校低学年向き。

2012年2月15日水曜日

おおきくてもちいさくても……












「おおきくてもちいさくても……」(マリア・エンリカ・アゴスティネリ/絵 エリザベス・ボルヒェルス/作 はせがわしろう/訳 ほるぷ出版 1979)

ご婦人が、悲しそうな顔をして歩いています。新しい服に、新しい帽子、お天気だってとってもいいのに、一体どうしたといいのでしょう。「みんなはすらりとやせているのに、私は太っちょ、100キロなんて」。そこへ、ゾウがやってきたので、女のひとはにっこりします。「太ったゾウの歩きかた、なんて立派なことでしょう」

このゾウは、もう一頭のゾウとくらべたら、特別太っちょなわけではありません。太っちょのゾウは、カバをみてうらやましいと思います。「なんて可愛く小さく素敵なんでしょう。なのに私はこんなに太っちょ」

太っちょな生きものが、自分より小さな生きものをうらやましく思う、という絵本です。絵は、にじみが美しい水彩。このあと、ワニはタゲリを、タゲリはヒタキを、ヒタキはハエをうらやましがります。もちろん、ほかの生きものをうらやむのが、この絵本の本意ではありません。「なにになりたがってもいいけれど、悲しんだりしてはいけません」。詩を思わせる文章の、落ち着いた雰囲気の一冊です。小学校低学年向き。

2012年2月14日火曜日

きたかぜとたいよう












「きたかぜとたいよう」(イソップ/作 バーナデット/絵 もきかずこ/訳 西村書店 1993)

あるとき、北風と太陽がいいあらそいをはじめました。どちらも、強いのは自分だといってゆずりません。ふと下をみると、マントを着た旅の男が歩いています。そこで、北風は太陽に、「あの男のマントを引きはがせたほうが強いってことにするんだ」といいました。

男のマントを引きはがそうと、北風は強く吹きつけます。ですが、北風が強く吹けば吹くほど、男はマントにしがみつきます。

イソップ童話の「北風と太陽」をもとにした絵本です。絵は、おそらく水彩と色鉛筆でえがかれたもの。北風と太陽を擬人化せずに、旅人の振る舞いに焦点を当てています。場面のえがきかたにも工夫をこらし、品格のある一冊となっています。小学校低学年向き。

2012年2月13日月曜日

くんちゃんとにじ












「くんちゃんとにじ」(ドロシー・マリノ/作 まさきるりこ/訳 ペンギン社 1984)

ある春の日、雨がやんだので、子グマのくんちゃんは外へかけだしていきました。すると、外には大きな虹がかかっていました。「虹の根元には金のつまった壺が埋まっていると聞いたことがあるよ」と、小鳥がいったので、くんちゃんはうちからお鍋をもって、虹の根元にむかって走りだしました。

お父さんやお母さんは、「それはただのおとぎ話ですよ」というのですが、くんちゃんは聞きません。途中、リスやウサギやシマリスに道を聞き、虹の根元めざします。

「こぐまのくんちゃん」シリーズの一冊です。絵は、白と黒とオレンジの3色。ちゃんと、虹が虹らしくみえるところが不思議です。虹を追いかけて大きな木のところまできたくんちゃんでしたが、虹は消えてしまいます。でも、くんちゃんは木に登り、代わりに素敵なものをみつけます。小学校低学年向き。

2012年2月10日金曜日

みどりいろのバス












「みどりいろのバス」(ジョン・シャロン/作 こだまともこ/訳 ほるぷ出版 1979)

緑色のバスは、もう年をとってくたびれていたので、あまりはたらくことはできませんでした。運転手の府レッドさんと車掌のチャールズさんは、森のなかに緑色のバスを捨ててしまいました。でも、しばらくすると、ジェーンとスティーブンという2人の子どもがやってきて、緑色のバスをみつけました。「やあ、これは素敵なうちになりそうだよ」と、2人は座席をベッドにつくり変えたり、窓にきれいなカーテンをかけたりしました。

ある日、背の高い男がやってきて、「わしの森にバスをとめるとはけしからんぞ」と、2人は追い出されてしまいます。緑色のバスをどうやってうごかそうかと思っていると、ちょうど垣根のむこうから、おじいさん馬がひょっこり顔をだし、「わたしでよかったら手伝ってあげるよ」といってくれます。そこで、馬がバスを引き、みんなそろって出発します。

絵は、線画に水彩で着色した、柔らかい印象のもの。このあと、緑色のバスとその一行は、火事の市役所から市長さんを助けたり、楽団を乗せて走ったり、坂道をものすごいスピードで走って海に落ちたりします。さまざまな出来事はどこまでも楽天的で、読んでいると自分も緑色のバスと一緒に旅をしているような気分になります。小学校低学年向き。