2012年10月20日土曜日

ゆきだるま












「ゆきだるま」(レイモンド・ブリッグズ/作 評論社 1978)

文字のない、コマ割りによる絵だけの絵本です。

朝、男の子が目をさますと、外は雪景色。さっそく、外にでて雪だるまをつくります。帽子をかぶせて、マフラーを巻き、ミカンを鼻に、石炭を目とボタンにして、さあ完成。そして夜。目をさました男の子が家のドアを開けると、雪だるまは帽子をとって挨拶をします──。

「スノーマン」というタイトルでも知られた絵本です。アニメーションにもなっています。絵は、おそらく色鉛筆でえがかれた、あたたかみのあるもの。雪だるまもあたたかそうにみえるのが不思議です。さて、このあと男の子は、雪だるまを家のあちこちに案内します。雪だるまはあたたかいものが苦手なので、ストーブではなく冷蔵庫にあたったりします。そして終盤、雪だるまは男の子を連れて空へと舞い上がります。冬のひと晩のできごとをえがいた美しい絵本です。レイモンド・ブリックスの作品はほかに、「サンタのなつやすみ」などがあります。小学校中学年向き。

2012年10月19日金曜日

ノアのはこ船











「ノアのはこ船」(ピーター・スピアー/作 松川真弓/訳 評論社 1986)

あらそいごとを尻目に、神の恵みをうけて暮らしていたノアは、神の言葉を聞き、巨大な箱船をつくりました。箱舟には、家族と、たくさんのつがいの動物たちを乗せました。そのうちに、大雨が降り、大洪水が起こって、地上のものをなにもかも呑みこんでしまいました──。

ノアの箱船伝説をもとにした絵本です。ほとんど文字がなく、お話はコマ割りされた絵によって進みます。本書には、ノアが神の言葉を聞く場面はありません。ブドウをつくっていたノアは、突然巨大な箱船をつくります。おそらく、お話は自明のものとされているのでしょう。見所は、大変よくえがかれたディティールです。草食動物は歩いて船に乗りますが、肉食動物はオリに入れてはこびこまれます。箱船のなかは、動物たちの排泄物だらけ。船内には、池がつくられていて、カバや水鳥が暮らし、ビンのなかにはさまざまな虫が飼われています。そして、箱船はついにアララト山頂に到着。箱船は打ち捨てられ、ノアはまたブドウづくりにはげみます。小学校中学年向き。

2012年10月18日木曜日

ぐりとぐら










「ぐりとぐら」(中川李枝子/文 大村百合子/絵 福音館書店 1967)

 野ネズミのぐりとぐらは、大きなカゴをもって、森の奥へでかけました。

《ぼくらの なまえは ぐりと ぐら
 このよで いちばん すきなのは
 おりょうりすること たべること
 ぐり ぐら ぐり ぐら》

2匹が話しながらいくと、道の真ん中に、とても大きなタマゴが落ちていました。タマゴをみつけた、ぐりとぐらは、目玉焼きにしようか、玉子焼きにしようかと話しあったすえ、カステラをつくることにします。でも、タマゴはあんまり大きくて、もち帰れそうにありません。そこで、2匹はおナベをもってきて、ここでカステラをつくることにします──。

ほとんど、絵本の代名詞となっているような1冊、「ぐりとぐら」です。手元の本の奥付をみると、1967年第1刷、2009年第177刷となっています。さて、このあと、いったんうちに帰ったぐりとぐらは、一番大きなおナベと、小麦粉、バター、牛乳、砂糖、ボール、泡立て器、それにエプロン2枚とマッチをもって、タマゴのところにやってきます。げんこつでは割れなかったので、石でタマゴを割り、牛乳と砂糖と小麦粉を入れて、ボールでよくかき混ぜて、おナベにバターをよく塗って、材料を入れて焼けるのを待っていると、じき森じゅうの動物たちがやってきます──。みんなで美味しいものを食べ、最後にタマゴのカラで、ちょっとしたものまでつくる、大変幸福感に満ちた1冊です。小学校低学年向き。

2012年10月16日火曜日

おいらはトムベエ










「おいらはトムベエ」(中沢けい/文 オリガ・ヤクトーヴィチ/絵 福音館書店 2003)

ネコのトムベエは、最初はトムでしたが、いたずら好きなので、いつのまにかトムベエになりました。お絵描きしているニイナちゃんのところにいくと、「トムベエったら、じゃましないで」とニイナちゃんにいわれました。でも、ニイナちゃんとお母さんがお使いにいったので、トムベエはニイナちゃんが描いていたトリの絵にさわってみました。

トムベエが、前足でトリに色を塗ってみると、トリは紙から抜け出して宙を飛んできます。驚いたトムベエは、窓から逃げ出したトリを追いかけて──。

絵を描いたオリガ・ヤクトーヴィチは、「かもkむすめ」などを描いたひと。写実的な画風で、淡い色づかいが魅力的です。文章は本来〈おいら〉という、トムベエの1人称。このあと、外にでたトムベエは、スズメやカラスにからかわれたり助けられたりしながら、紙のトリを追いかけます。見返しに、松居身紀子による抽象画がつかわれています。小学校低学年向き。

2012年10月15日月曜日

のらねこボタン












「のらねこボタン」(トム・ロビンソン/文 ペギー・ベイコン/絵 光吉夏弥/訳 大日本図書 1988)

オスネコは、路地の奥のそのまた奥の、石炭がらを入れる灰入れの缶のなかで生まれました。生まれて6週間目にやっと目が開きましたが、まだうまく歩くことができません。でも、転がることはできたので、灰入れの缶から転がりでました。そして、食べられるものならなんでも食べて、夜はまた灰入れの缶によじ登って眠りました。

オスネコはだんだん大きく強くなります。耳はちぎれ、顔はひっかかれ、尻尾は折れという姿になりますが、オスネコはいまや路地の王様になり──。

カバー袖の、「作者と作品について」によれば、作者のトム・ロビンソンは建築家で、友人と開いた建築事務所にあらわれたのが、この野良ネコだったそうです。1ページごとに絵があり、絵の下に文章があるといった構成で、黒一色の絵は、おそらくパステルかコンテでえがかれたもの。ネコのしぐさや特徴などが、素晴らしい実在感でえがかれています。さて、路地の王様となったオスネコですが、このあと、別のネコを追いかけて木に登り、そこから降りられなくなってしまいます。消防自動車が助けにきたのをみたオスネコは、近くの窓に飛びこみ、その家の地下室にあった灰入れの缶でひと眠りするのですが、じきその家の家族にみつかって──と、お話は続きます。「のらねこボタン」というタイトルは、家の女の子がオスネコにつけた名前からきています。とても読みやすい、読物絵本です。小学校低学年向き。

2012年10月13日土曜日

せんをたどって












「せんをたどって」(ローラ・ユンクヴィスト/作 ふしみみさを/訳 講談社 2007)

線をたどって、朝の街へ。ひとびとは目をさましたばかり。大通りを走り抜け、信号や標識のあいだを通って、海を渡り、海底に潜り──。

はじめから終りまで、ひと筆書くでえがかれた、「せんをたどって」シリーズの1冊です。ただし、すべての絵がひと筆書きでえがかれているわけではありません。たとえば海中の絵のなかの、何匹かの魚やカニがひと筆書きでえがかれているといった具合です。そして、ページ中に、「ひとでは なんびき いるかな?」といった文章が記されます。絵はセンスの良いグラフィカルなもの。朝からはじまった線の旅は、海や空や森を越え、夜になり、裏表紙にいたって終わります。同趣向の絵本に、「どうぶつどみちいっぽんみち」があります。小学校低学年向き。

2012年10月12日金曜日

北京(ぺきん)











北京(ぺきん)(于大武/作 文妹/訳 ポプラ社 2012)

おもに、清の時代の北京を中心に、街の真ん中をつらぬく中軸線に沿い、南から北にむかって街の様子をえがいた絵本です。副題は「中軸線上につくられたまち」

まず、北京の入口である永定門(えいていもん)からスタート。真っ直ぐ進んで、正陽門(せいようもん)に。正陽門の門前は、北京で一番にぎやかな場所だったそうで、たくさんのお店が並んでいます。正陽門の内側には、皇帝と皇后だけが御路(ぎょろ)が伸びており、その先が天安門。端門(たんもん)を通り、午門(ごもん)を通って紫禁城へ──。

絵は、端正で色鮮やかなもの。構図は斜め上からで、カメラが進んでいくように、中軸線の上をずっと進んでいきます。このあとは、皇帝一族の庭園である御花園(ぎょかえん)を通り、時代は現代になって、鳥の巣(北京国家体育場)と、水立方(北京国家水泳センター)をのぞみます。

本書は解説が充実しています。本文では触れなかった正陽門の門前のお店が、ひとつひとつ紹介されます。建物はわかりやすく色分けされ、それぞれ名称が記されます。大変見所の多い知識絵本です。小学校高学年向き。