2010年10月5日火曜日

ないしょのおともだち











「ないしょのおともだち」(ビバリー・ドノフリオ/文 バーバラ・マクリントック/絵 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2009)

昔、とても大きな家にマリーという女の子が住んでいました。この家のすみには、ネズミの女の子が住んでいました。ある晩、マリーは夕飯のあとかたづけをしていて、フォークを落としました。ちょうど同じとき、ネズミの女の子も夕飯のあとかたづけをしていて、スプーンを落としました。マリーは、フォークを拾おうとしてネズミの女の子に気づき、ネズミの女の子はスプーンを拾おうとしてマリーに気づきました。

こうして内緒のお友だちになった二人は、毎晩フォークとスプーンを落として挨拶をかわします。大きくなった二人はそれぞれ家をでて、ひとり立ちするのですが、娘の代になってまたつきあいがはじまります。

母娘二代に渡る、女の子とネズミの交流をえがいた可愛らしい絵本です。細部までよく考えられた絵は、見応え充分。ひとり暮らしをはじめた女の子とネズミの部屋に、たがいの絵が貼ってあるところなど、見ていてうれしくなります。文章もきびきびして、何度も楽しめる絵本になっています。小学校低学年向き。

2010年10月4日月曜日

ロバのおうじ












「ロバのおうじ」(M.ジーン・クレイグ/再話 バーバラ・クーニー/絵 もきかずこ/訳 ほるぷ出版 1979)

昔、広くて平和な国を治めている王様とお妃さまがいました。王様はなによりも自分の財産が好きで、ひまさえあれば金蔵にこもって、銀ののべ棒や金貨やルビーや真珠を数えてすごしました。お妃さまはなによりもきれいなお召しものが好きで、ひまさえあれば鏡のまえでドレスを着替えてすごしました。ふたりには子どもがいなかったのですが、ある日旅人から、どんな願いもたちどころかなえてくれる魔法使いの話を聞きました。そこで、王様とお妃さまは馬に乗り、大きな森の洞穴に住む魔法使いを訪ねました。

さて、王様とお妃さまの話を聞いた魔法使いは、代金として金貨のつまった袋を3つ要求します。ところが、王様は支払いにまがいものの金貨を混ぜ、それに気づいた魔法使いは、お妃さまにロバそっくりの子どもが生まれるよう呪文をかけます。

グリム童話の「ロバのおうじ」を元にした絵本です。王子は立派に成長しますが、ロバの姿のため、だれにも愛されることがありません。そこで、王子はリュートをひとつたずさえて旅にでます。絵は、おそらくパステルと水彩でえがかれたもの。クーニーはここでも素晴らしい仕事をしています。透明感があり、親しみやすく、簡潔ながらよく空間を表現し、物語を語って過不足のない、大変美しい絵がみられます。小学校低学年向き。

2010年10月1日金曜日

鳥少年マイケル

「鳥少年マイケル」(トミー・デ・パオラ/作 ゆあさふみえ/訳 ほるぷ出版 1983)

鳥少年のマイケルは静かな田舎に暮らしていました。マイケルは毎日目をさますと、顔を洗い、鳥のかたちの服を着て、朝ごはんを食べ、一日の仕事をして暮らしていました。毎日、空の様子は変わり、季節はめぐり、木の葉の色は変わっていきました。

ところが、ある日どこからか黒い雲が流れてきて、空一面に広がり、花はしおれ、夜がきても月も星もみえなくなってしまいました。そこで、マイケルは荷物をまとめると、この黒い雲がどこからくるのか突きとめにでかけました。

町にたどり着いたマイケルは、〈空とぶクツ〉印の特製はちみつシロップ工場から黒い煙がでているのをみつけます。工場のもち主、ボス・レディに話をすると、ボス・レディはこたえます。「お砂糖をあのでっかい炉で溶かすときに、黒い煙がでちゃうのね」。そこで、マイケルはボス・レディに本物のはちみつをつくることをすすめます。

自然の大切さを説いた絵本です。こういう話はうるさくなりがちですが、この絵本はそうなっていません。ボス・レディの素直さのおかげです。小学校中学年向き。

2010年9月30日木曜日

ヒギンスさんととけい










「ヒギンスさんととけい」(パット・ハッチンス/作 たなかのぶひこ/訳 ほるぷ出版 2006 )

ある日、ヒギンスさんは屋根裏部屋で大きな時計をみつけました。時計がちゃんとあっているかどうか確かめるために、ヒギンスさんは時計をひとつ買ってきて寝室におきました。寝室の時計がちょうど3時をさしていたので、いそいで屋根裏部屋にいくと、屋根裏部屋の時計は3時1分をさしていました。

ヒギンスさんはもうひとつ時計を買ってきて台所におきます。台所の時計が4時10分前のとき、屋根裏部屋の時計をみにいくと4時8分前、いそいで寝室にいってみると寝室の時計は4時7分前でした。そこで、ヒギンスさんはもうひとつ時計を買ってきて──。

どの時計が正しいのかさっぱりわからなくなってしまったヒギンスさんのお話。「時」というものがどんなものか、素晴らしい明快さでえがかれています。巻末には、作者のこんなことばが載せられています。

「私は子どもだからといって、調子を下げるつもりはありません。ただ、物語が論理的にきちんとしていることを心がけています」

時計の読みかたをおぼえる絵本としてもつかえるかもしれません。小学校低学年向き。

私の船長さん












「私の船長さん」(M.B.ゴフスタイン/作 谷川俊太郎/訳 ジー・シー 1996)

私のいる棚の下の窓枠には、いっそうの漁船がいかりを下ろしています。そこからは、潮の香りがただよってきます。私は、なぜか船長さんが私に会いに上がってくるような気がします。そして、私は思います。彼はすぐに気づくだろう。私がビンのなかの船をもっていることや、貝がらをあつめていることに――。

小さな人形の〈私〉が、船長との静かな恋を想いえがく、という絵本です。人形の〈私〉は、こんなことを思います。

《もし私が船長さんに
 何かをすすめるとして、
 テーブルにブリストルのお皿と
 銀の塩とコショウ入れをならべたら、
 彼はきっと自分の運のよさに
 びっくりすることだろう!》

シンプルこの上ない線画とことばが、読む者の胸に迫ります。大人向き。

2010年9月28日火曜日

小さな乗合い馬車










「小さな乗合い馬車」(グレアム・グリーン/文 エドワード・アーディゾーニ/絵 阿川弘之/訳 文化出版局 1976)

ポッターおじさんの店には、店員が3人、配達小僧のティム、ネズミよけのネコが3匹、それからブランディという名前の子馬が1頭いました。ブランディは、前のもち主にいじめられていたので、ポッターさんはこの馬を買いとり、店の裏庭で子どもたちの遊び相手をさせていました。ある日、道のむこうに「えいせい商会かぶしき会社」という、大きな新しい食料品屋ができました。そのため、おじさんの商売はだんだん苦しくなっていき、店員はひとりまたひとりといなくなってしまいました。しまいには3匹のネコまでがいなくなり、小僧のティムだけが残りました。

「えいせい商会」では、お客さんの買い物を2輪馬車で配達します。2輪馬車がうちの前に停まると、大人たちは自分がえらくなったような気がするのです。いっぽう、すっかり落ちこんで、眠れない夜をすごしていたポッターおじさんは、倉庫から小さな乗合い馬車をみつけます。おじさんは、ティムを御者にし、ブランディに乗合い馬車を引かせることを思いつきますが、店に客はもどってきません。ところが、このあと大事件が起こります──。

「第三の男」などで高名なグレアム・グリーンの原作による絵本です。話はこのあと、「えいせい商会」の売上金を狙った盗難事件と、泥棒を追いかけるブランディと小さな乗合い馬車の活躍へと続きます。途中から、小さな乗合い馬車が人格をもったように描かれているのが、少し不思議なところです。小学校中学年向き。

あなただけのちいさないえ












「あなただけのちいさないえ」(ベアトリス・シェンク・ド・レーニエ/文 アイリーン・ハース/絵 ほしかわなつよ/訳 童話館出版 2001)

ひとはだれでも、自分だけの小さな家をもつ必要がある──ということを説いた絵本です。

《ひとはだれでも、そのひとだけの家を
 もつ必要があります。
 もちろん、あなたは、
 お母さんやお父さんと一緒にあなたの
 家に住んでいますね。
 でも、わたしがいっているのは、
 そういうことではありません。》

大きなカサは申しぶんのない家になるし、やぶの後ろのくぼみは、小さな素敵な家になります。少しのあいだなら、ベッドの毛布の下に小さな家をつくることができます。お父さんが新聞のかげにいるときは、お父さんはお父さんだけの小さな家にいるのだし、お母さんがうたたねいているときは、お母さんはお母さんだけの小さな家にいるのです。

《あなたは、みんなとはなれて
 ひとりになりたいと思うときがあります。
 子どもたちと一緒でもなく、
 大人のひとと一緒でもなく、
 だれにも、なんにも、うるさくされずに、
 そんなとき、あなただけの
 小さな家をもっているのはよいことです》

文章はシンプルで論理的。線画によるさし絵が、文章によくアクセントをつけています。読むと、ひとはだれでも自分だけの小さな家が必要なのだと納得することでしょう。小学校中学年向き。