2010年5月25日火曜日

おおきなおとしもの











「おおきなおとしもの」(H.C.アンデルセン/原作 ジャン・ウォール/文 レイ・クルツ/絵 ともちかゆりえ/訳 ほるぷ出版 1979)

おばさんは1羽のメンドリと一緒に暮らしていました。メンドリは毎日立派なタマゴを生みます。ある日、メンドリがタマゴを12個も生み、おばさんは町にいってそれを売ることにしました。

タマゴの入ったかごを頭にのせ、町までいくあいだ、おばさんはタマゴが売れたらなにを買おうかと、大いに夢をふくらませます。まずメンドリを3羽買い、するとまたタマゴが売れるので、こんどは6羽。タマゴの半分はヒヨコにかえして、大きな鶏小屋を建てて、ヒツジを飼って…と、おばさんはすっかりその気になるのですが──。

アンデルセンの詩をもとにした絵本です。話の舞台は中世風。頭のなかで皮算用したただけで、おばさんはじつにうれしそうな顔をします。絵の色合いもはっきりしていて、お話会向けの一冊です。紙芝居もあり。小学校低学年向き。

2010年5月24日月曜日

まほうのなべ












「まほうのなべ」(ポール・ガルドン/再話・絵 晴海耕平/訳 童話館出版 1998)

昔むかし、村はずれの小さな家に、女の子とお母さんが住んでいました。とても貧乏で、食べるものがなにもなくなると、女の子は近くの森へクルミやイチゴをさがしにいきました。ところが、ある寒い朝、女の子は暗い森のなかを歩きまわりましたが、食べるものはなにひとつ見つかりません。倒れた木に腰かけて泣いていると、長いマントを着たおばあさんがあらわれていいました。「これは魔法のなべじゃ。火にかけてこう唱えなさい。〈煮えろ、小さななべよ煮えろ!〉。そうすると、なべはおいしいオートミールでいっぱいになる。食べるだけ食べたら、こう唱えなさい。〈とまれ、小さな鍋よとまれ〉」

さて、おばあさんからおなべをもらった女の子は、走って家に帰ると、さっそくなべを火にかけてみます。〈煮えろ、小さななべよ煮えろ!〉というと、オートミールが煮え、〈とまれ、小さな鍋よとまれ〉というと、煮えるのがぴたっととまります。こうして、いつでも好きなだけオートミールが食べられるようになりましたが、ある日、女の子が友だちのうちに遊びにいったとき、お母さんはおなべをとめる呪文を忘れてしまい、オートミールはねべからこぼれ、家のなかを埋めつくし、ついには村のなかにまであふれでて──。

村中がオートミールだらけになる場面が圧巻です。これからどうなるんだろうと、読んでいてはらはらしてしまいます。また、村のひとたちが、うれしそうにオートミールを食べる姿も印象的です。小学校低学年向き。

なお、本書は「まほうのおなべ」(ポール・ガルドン/再話・絵 田中とき子/訳 岩崎書店 1980)としても出版されています。タイトルや訳者はちがいますが、同内容の絵本です。

2010年5月21日金曜日

仕立屋のニテチカさんが王さまになった話












「仕立屋のニテチカさんが王さまになった話」(コルネル・マクシンスキ/再話 足達和子/訳 ボグスワフ・オルリンスキ/絵 偕成社 2010)

タイダライダという小さな町に、仕立屋のユゼフ・ニテチカさんが住んでいました。とてもやせっぽっちで、スパゲッティのほかはのどを通らないので食べられないほどでした。あるとき、足をけがしたロマ女の傷口をきれいに縫ってあげると、ロマ女はお礼に手相をみてくれました。「日曜日に町をでて、西へ西へといきなされ。あんたを王さまにしてくれる国につきまする」。その夜、ほんとうに王さまになった夢をみたニテチカさんは、ふろしきに針を100本、糸を1000キロメートル、それに指ぬき、アイロン、裁ちバサミを包んで、西にむかって旅立ちました。

ポーランドの昔話を絵本にしたもの。このあと、ニテチカさんは、たまたま知りあった、かかしの伯爵とともに、さまざまな冒険をし、近ごろ王さまが亡くなったというパツァヌフをめざします。文章はタテ書きの読物絵本。登場人物も物語も、陽気で奇想天外です。ラストの壮大さにはびっくりします。

巻末のあとがきでは、物語をていねいに解説しています。それによれば、パツァヌフは実在の町ですが、昔話では必ずおかしなひとばかりが住んでいて、おかしなことばかりが起こる町(昔話研究用語で〈愚か村話〉と分類される話〉)として語られる町だということです。小学校中学年向き。

2010年5月20日木曜日

おおきな木












「おおきな木」(シェル・シルヴァスタイン/作 ほんだきんいちろう/訳 篠崎書林 1976)

昔、大きなりんごの木がありました。木は、かわいいちびっこと仲良しでした。ちびっこは、落ちてくる木の葉をあつめたり、冠をつくって王様を気どってみたり、木によじ登ったり、りんごを食べたりしました。ちびっこは木が大好きでしたし、木もちびっこが大好きでした。けれども、時は流れ、ちびっこは大きくなり──。

大人になり、ひさしぶりにやってきたちびっこは木にいいます。「ぼくはもう大きいんだよ。木登りなんておかしくて。買い物がしてみたい。だからお金がほしいんだ。おこづかいをくれるかい」。そこで木は、りんごを町で売ったらどうだろうと提案し、ちびっこは木によじ登って、りんごをみんなもぎとります。「木はそれでうれしかった」。

このあとも、木はちびっこに自分の全てををあたえ続けます。原題は“The Giving Tree”。大人から子どもまで楽しめ、考えさせられる、忘れがたい絵本です。小学校中学年向き。

追記。2010年に、あすなろ書房より、村上春樹訳が出版されました。そこで、ほんだ訳と村上訳をならべてみたいと思います。

ほんだ訳
《むかし りんごのきが あって…

 かわいい
 ちびっこと
 なかよし。

 まいにち
 ちびっこは
 やってきて

 きのはをあつめ

 かんむり
 こしらえて
 もりの おうさま きどり。》

村上訳
《あるところに、いっぽんの木がありました。

 その木は
 ひとりの少年の
 ことが
 だいすきでした。

 少年はまいにち
 その木の下に
 やってきました。

 そして はっぱを いっぱい あつめ ました。

 はっぱで
 かんむりをつくり
 森の王さまになりました。》

「きのはをあつめ」と「そしてはっぱをいっぱいあつめました。」の箇所は、木の葉が落ちるように文字組みがデザインされています。

2010年5月19日水曜日

グースにあった日











「グースに会った日」(キャリ・ベスト/文 ホリー・ミード/絵 まえざわあきえ/訳 福音館書店 2003)

春になると、沼にグースの群がやってきます。グースは人間と変わりありません。おじいさんやおばあさん、おじさんおばさん、若いグース。みんな黒と白と灰色と茶色の羽をもち、地面にすわりこんだり、眠ったり、水を飲んだりと好きなことをしています。犬のヘンリーが走っていってグースを追い散らすと、一羽だけ飛び立たないグースがいました。そのグースは片足がちぎれていました。

女の子の〈わたし〉が語る絵本です。〈わたし〉は1本足のグースが気になってしかたありません。うちで飼おうといいますが、パパとママに、「野生のグースは、弱くても、自分で生きていくことをおぼえなくてはいけないの」と、いわれてしまいます。そのうち秋になり、群はいなくなりますが、〈わたし〉は1本足のグースのことが忘れられません。そして、春がやってきて──。

絵は、切り絵による、立体感のあるもの。最後の1行がぐっとくる、感動絵本です。小学校中学年向き。

2010年5月18日火曜日

ちびフクロウのぼうけん












「ちびフクロウのぼうけん」(ノーラ・スロイェギン/文 ピルッコ・リーサ・スロイェギン/絵 みむらみちこ/訳 福音館書店 2009)

みんな朝ですよ、寝る時間ですよ、と母さんフクロウが子どもたちにいいました。でも、末っ子のちびフクロウはちっとも眠くありません。そろそろと木を降り、雪の上でぴょんぴょんしている動物に近づくと、「ねえ、ぼくと遊ぼうよ」といいました。

ぴょんぴょんしていたのはウサギでした。でも、ちびフクロウはウサギのように、ぴょんぴょん飛び上がることはできません。クマやリスにも会いますが、クマのように大きな足はありませんし、リスのように松ぼっくりの種を食べたくありません。すると、母さんフクロウがあらわれて、こういいます。「わたしたちは、空を飛べるわ」

「こすずめのぼうけん」によく似た絵本です。絵は、毛の感触までつたわってくるような緻密な水彩画。登場する動物たちの演技が多少擬人化されています。小学校低学年向き。

2010年5月17日月曜日

こすずめのぼうけん









「こすずめのぼうけん」(ルース・エインワース/作 堀内誠一/絵 石井桃子/訳 福音館書店 1977)

あるところに、一羽の子スズメがいました。子スズメが大きくなると、お母さんは飛びかたを教えました。「石垣の上までいったら、きょうのお稽古はそれでおしまい」。さっと前に飛び立つと、驚いたことに、子スズメはちゃんと空中に浮かんでいました。「ぼく、これならあの石垣のてっぺんよりも、もっと遠くへ飛んでいける」と、子スズメは石垣の先へ先へと飛んでいきました。

そのうち、くたびれてしまった子スズメは、ひと休みしようとカラスの巣を訪れます。でも、カラスの鳴き声がだせないから仲間じゃないと、巣に入れてもらえません。以下はくり返しです。子スズメはハトやフクロウやカモの巣を訪ねますが、いずれも断られてしまいます──。

堀内誠一さんの絵が、大変素晴らしいです。子スズメが可愛らしいのはもちろん、空を飛んでいるところなど、いかにも感じがでています。また、だんだんと日が暮れていく描写もみごとです。小学校低学年向き。